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VideoNews「われわれはビッグデータの暴走を制御できるのか」菅原×神保×宮台(視聴メモ)

【動画概要】

凄腕ハッカーのスノーデンとウィキリークスの繋がり。 米国は自国民と同盟国を盗聴し、中国にサイバー攻撃していた。ビッグデータを解析した捜査の妥当性を、誰が判断できるのか。統治権力の変容。行政の執行の暴走。

 

【視聴動画】

マル激トーク・オン・ディマンド 第638回(2013年07月06日)
「われわれはビッグデータの暴走を制御できるのか」

 

ゲスト:菅原出氏(国際政治アナリスト)

 

【アメリカの盗聴法

民間の情報会社(グーグルなど)に対して、「情報をよこせ」と政府が命令を出せる法律(外国諜報活動監視法:FISA)は、冷戦時代からあって、敵国のスパイの活動を知るための盗聴に関する法律。その活用のされ方が、9.11.以降、新しい展開を見せている。

 

【スノーデンのカミングアウト】

NSAと契約している民間会社の契約社員。何万人も関わっているはずだが、今まで出てこなかったことも驚き。

NSAの研修で使う「我々は、このようにして情報を収集していますよ」という資料が流出した。

スノーデンが、そのようなデータを取れたのは、セキュリティの担当者で、ハッキングのトレーニングも受けていた。敵国からの攻撃を想定して、ハッカーの気持ちになってセキュリティーを攻略する仕事をしていた。

 (「ペンタゴンペーパー」も、外部の協力会社の社員から漏れた。)

スノーデンは早い段階から、wikileaksの人間とコンタクトを取っていて、マスコミへの発表の仕方、身の置き場など想定していたようだ。その状態を取って、最後の職場に入社した。

アメリカは「小さな政府」を推し進めているが、国家の枢要な機密まで、国家に対して忠誠心があるかどうかわからない民間会社の契約社員に任せているのが、驚き。しかし、ハッキングの世界では、このような人間を政府の人間として雇ってしまうと、働かないのに胡坐をかいて、技術の進歩についていけなくなって人件費のお荷物になるのが目に見えているから。

スノーデンは、高校中退のただのアメリカ人なので、裏でだれか操っているのか、と最初思われたが、ここまでの事をするのは、やはり個人的に考えつめたうえでの確信犯だろう。アメリカには二度と帰れない、ということは分かっていただろう。

最初にCIAに雇われてコンピュータの仕事をした時に、高校中退なのに1000万円を超える年収を貰って、最後の職場では2000万円だった。通常は、そのぬるま湯で黙っちゃう。

共産主義者でも、イスラム教徒でもないようだ。どこかの国のスパイでもなさそうだ。現時点では、一匹オオカミの義賊、という理解。

アメリカは、今後も彼のようなハッカーを利用せざるを得ないので、何としてもスノーデンを捕まえて厳罰に処したい。そして一罰百戒として、次の裏切者が出ないようにしたいのだが、もし彼が南米のビーチかどっかでよろしくやってる様子がインタビューかなんかで流れたら、アメリカのNSAはやってられない。

 

【スノーデンの亡命】

ロンドンのエクアドル大使館はウィキリークスのアサンジをかくまっていて、スノーデンはエクアドルに亡命申請を出しているが、エクアドルはアメリカからの圧力で、亡命を受け入れなかった。もちろんエクアドルは反米左派で、スノーデンを受け入れれば、チャベスなき今、国際社会でのポイントは高まるのだが、アメリカが国家の威信をかけて取り押さえようとしている人物をかくまうほどの国は、今あるのか、という状況。

今はロシアの空港周辺にいて、ほとぼりが冷めたらどこかの国が亡命を受け入れるかも。

アメリカから香港、ロシアへの出国は、アメリカは把握できていない。ウィキリークスの連中と連絡を取り合って、うまく出国したようだ。このような人たちが暗号を掛ければ、アメリカにも把握できない。義賊という説もあるが、知的ゲームを楽しんでいるハッカーなのかもしれない。どっちにしても、いい度胸をしている。

数千点のデータを取ったと言われていて、まだ流出していない更に重要なデータを取引材料にして、アメリカから譲歩を引き出すかもしれない。また、スノーデンの身に何かあればそれが自動的に流出するように仕掛けてあるとか。

世界中で活動しているCIAエージェント(スパイ)の名簿なんかが流出したら、エージェントの生命の危険の問題になる。

 

【NSAとNSC

National Security Agencyは、ペンタゴンの組織。電子データの収集、分析。2次大戦以前から諜報活動をしていた。

National Security Councilは、ホワイトハウスにある。安倍ちゃんが作りたがってるのは、こっち。

 

【暴露された諜報活動】

1.NSAによる秘密裏の情報収集

 電話会社に、通話記録を提供させた。大手ネットサービス(グーグル、ヤフー、facebook、…)からビックデータを提供させ、「プリズム」というソフトで解析。

 最初、スノーデンはこの部分だけを漏えいしたので、アメリカは「対テロ戦争の為に」という大義名分を挙げた。そして、これだけのテロを未然に防げた、とリストも見せた。しかし、時間を追って、2.以降の情報が明らかに。

 

2.中国に対するハッキングの実態

 香港でのインタビューで明らかに。

 

3.英国諜報機関の諜報活動実態

 イギリスもアメリカと似たようなことやってるぞ。海底ケーブルに盗聴装置を仕掛けて、情報を吸い取って解析しているらしい。

 

4.NSAによる同盟国への諜報活動

 日本やEUを含む34か国。貿易交渉をしながら、米国の経済に資する情報を盗聴活動によって仕入れている。(jizaki:TPPも勿論だね!)

 各国政府は、国民感情を慮って、表向きは抗議している。日本政府は抗議したのかな? 聞かないなあ。

中国は、ホワイトハウスの向かいにあるブレアハウスという迎賓館に泊まると確実に盗聴されるので、別の場所に宿泊している。日本の首相は、名誉なことだと喜んで泊まっている。

 

これらの諜報活動が明らかになって、オバマは「どこでもやっていることだ」とコメント。2.と3.もFISAの枠内で正当化しようとしているのだが・・・。

 

【盗聴器】

エクアドル大使館の電気のソケット部分から見つかったが、専門家によると、プロはそんな見つかりやすいところには仕掛けない。だから、アメリカによる諜報活動ではなくて、エクアドルの政治家同士の政争で政敵を貶める情報を得るためか、浮気の証拠を押さえるためか、何だかわからないが、そこら中から盗聴器が出てきて、何だかわからない状態になっている。

 

【盗聴情報の共有】

国際政治・外交の世界では、盗聴は当たり前。ガーディアンの記事では、大英帝国圏のイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは盗聴していないことになっている。これは、協定を結んで、盗聴した情報を共有しているから。自国民は盗聴できない建前だから、他国から情報を融通されると嬉しい。

 

【NSAの諜報システム】

    コンテンツ  メタデータ

ウェブ PRISM    MARINA

電話  NUCLEON  MAINWAY(いつ、どこからどこに何分掛けたか)

存在が明らかになっただけで、どのような仕組みで、なにを調べているのか、が明らかになっていない。

メタデータとは、封書の表から読める情報のようなもの。初期に、アメリカ政府が「メタデータしか取っていないから罪が低いんだ」と言っていたが、メタデータでも大量に収集して解析すれば十分な情報が含まれる。

アマゾンのレコメンド機能と同じで、行動傾向が推察できる。

 

【PRISM】

NSA→FBI→ネット9社(マイクロソフト、グーグル、…)の経路で、検索されている。

9社のトップに、Nacional Security Letterが送られている。NSLが届くと、赤紙どころの騒ぎじゃなくて、手紙が届いたこと自体口外してはいけないし、協力しないと大変なことになる。

知ってる人は「PRISMなんて知らない」て言わなければいけないし、その他大勢の社員は知らないから「知らない」と言うし、秘密裏にPRISMが立ち上がっている。

スノーデンによって、これほどの諜報活動が暴露されたにもかかわらず、アメリカの世論調査では、50%の人が「仕方ない、テロとの戦いのためだから」と答えている。

民主統制=シビリアンコントロール?何それおいしいの? 

 

【オバマ】

庶民派のイメージのあるオバマだから、自国民をも監視する活動に衝撃を受けたが、プログラムの大部分はブッシュ時代に完成していた。しかし、オバマ時代になっても、これらの諜報活動は縮小することなく拡大している。主権権力にとっての情報の重要性。

無人爆撃機プレデターによる作戦も(誤爆が多いのだが、米兵は死なないし、パキスタンのトップがブッシュ時代のように協力的じゃなくなったので、オバマ時代になってプレデターの出撃は増えている)。

オバマは彼自身のリベラルなイデオロギーに基づいて「核なき世界」を掲げて核不拡散、核削減に取り組んでいるし、グアンタナモも締めようとしている。拷問と言われてもおかしくない激しい尋問は、止めさせた。

しかし合理的な人でもあって、大規模な軍隊を送るコストより、別のやり方(情報技術)で目的を達成するのを好む。

 

【ビッグデータ】

25年後には、NSAの諜報活動は公開されるので、事後チェックは出来る。

しかし、ビッグデータを解析するソフトが適正に利用されているかどうかを、いかにしてチェックするのか。担当者を信用するしかない、ということになるのか。

 

【法の執行】

逮捕や、判決の際には、警察署や裁判所の専門家であるサイバーウィザードが情報提出や助言はするにしても、最終的には警察署長や裁判長が決定することになるのだが、警察署長や裁判長に、サイバーウィザードの提出した資料を構成に判断できるのか?

遠隔操作ウイルス事件の被疑者の片山氏も、成りすましの被害者の可能性があって、そこをどう検証するのか。ハッカー集団ANONIMOUSが判断するのか。

Due proccess of law(法の適正手続き)は、素人も推定できるものでなければならない。推定無罪の原則。

 

【日本】

日本は他国のような諜報活動はしていないようだ。いいことかな。 

日本では通信の秘密が高いレベルで守られている。逆にスパイ天国になって、公益が損なわれている、とも言われている。統治権力のインテリジェンス(情報収集能力)が弱い。 サイバー攻撃に対する防御力も、低い。

 

【平和ボケ?】

日本は、自分たちのセキュリティーは自分たちで守る、という意識が薄い。日揮のテロ対策も、相手国が何とかしてくれるだろう、と委ねている。ITの分野でも、顕著にそう。これは、アメリカの傘に入ってきたから。

 

【行政機構】

しかし、今回の参院選の候補者を見ていても、タレントの顔ばかり。そんな彼らが、諜報機関をハンドリングできるのか。何倍も優秀な官僚の暴走をチェックできるのか。

いや、このように複雑化した社会では、社会の全体を見渡して、行政官僚の運用をチェックすることなど、誰にもできない。この問題は、日本か欧米かという話ではない。スノーデンが別方向に暴走ししたりとか。

 

【主体化、管理権力】(このあたりから、議論は迷走)

近代社会をうまく回すミソは、人間を倫理化=主体化すること。しかし、それが上手く行かなくなってきた。

主体性を信頼せずにコントロールするには、環境管理型権力が、信用ならない動物的人間を誘導することだ、と議論されてきたが、その環境管理権力のアーキテクチャを構築・管理・監視する専門性を、民主化できるのか。

結局、アーキテクチャを構築する人間の倫理化=主体化が必要になる。

 

【社会統治システム】 

監視システム=MATRIX、リヴァイアサン(統治権力の暴走)、ビヒーモス(民衆暴動)、スノーデン(告発)、裏スノーデン(乱用)

社会契約説の3巨頭。公理系のホッブス(国家暴力)、歴史系のロック(抵抗=革命権)、感情系のルソー(小さなものの連合)。

 

【脳内ダダ漏れ現象】

住基ネットは紐付けが危ないと言われてきたが、facebookなどのネットのビッグデータは、紐付けできる・されるに決まってる。

大学生が、ツイッターで人の悪口を書くものだから、グループワークが上手く行かない、友達出来ない、恋愛実況して恋人と上手く行かなくなる。だからフルコミットメントしない。動物だからじゃないか? 

実体験重視ではなくて、その実況やリプを重視している。視聴者の受けを獲りに無理をするニコ生投稿者とか。

 

【9.11.からPRISMへ】

9.11.は、やはりアメリカが自らの行いを反省する最後の機会だったのではないか。力でねじ伏せるか、真摯に誠実に共存共栄を目指すか。

イラクという国を潰してしまって、中東情勢は大きく変わった。今更、イスラム国家と平和に共存できない状態。

グアンタナモでは、168人中、150人がハンガーストライキしていて、死にかけるとホースフィーディングと言って、口にホースを差し込んで栄養剤を注入している。令状もなしで逮捕して拷問して、今更釈放できない。中で死んでもらうしかない、という執行上の立場。オバマは締めたがっているが、国民を説得するロジックが、一人に1億円掛かっている、という・・・。アメリカの汚点がまた一つ。

主権(政治)より執行(行政)が優位にある

 

おわり