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VideoNews「3・11後の世界の共感を台無しにした日本のヘイトスピーチ」神保×宮台(視聴メモ)

【動画概要】

VideoNewsに会員登録していない人でも、youtubeでタダで見れる。宮台「2ch系ウヨブタは、右翼の名に値しない。安藤美妃問題と同じで、公共空間が存在しない。 公共空間は、自分とは出自も文化も、価値観や道徳観や性愛観も違う人間と、共存していくための知恵。日本には公共空間に関する歴史的伝統がない。」

 

【視聴動画】

ニュース・コメンタリー (2013年07月13日)

3・11後の世界の共感を台無しにした日本のヘイトスピーチ

http://www.videonews.com/charged/news-commentary/0001_3/002860.php

http://www.youtube.com/watch?v=WDHuuoQcOzc&feature=youtu.be

 

cf.↓中二のヘイトスピーチ(心臓の弱い人は閲覧注意)

http://www.youtube.com/watch?v=YqzwtGj1XuU

 

外国特派員協会で、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチについて、鈴木邦夫有田芳生が講演した。外国人記者は、この問題の実相を知らなくて、ショックを受けていた。

 

外国記者「今年の2月に、鶴橋で中二の少女がマイクで「在日朝鮮人は半島へ帰れ、鶴橋大虐殺を起こすぞ」という内容の演説をした様子が、youtubeで字幕付きで流れた。世界から日本への3.11.後の共感・同情が失われ、「日本は一体どうしてしまったのか」という印象を受けている。」

 

鈴木「その動画を知らなかった。日本人でも、その動画を検索してまで見る<熱心>な人は、ごく少数だ。しかし、それがネットで世界中に流れて、世界が日本を見る目に影響を与えているので、看過できない。日本のマスコミでは、そのような情報を報道しないが、ぜひ報道して、こんな発言は許されるのか、議論したほうがいい」

 

宮台「2chなどにたむろするネトウヨの実像は明らかになっていて、国民的な広がりを持たない。在特会の問題に無関心だからではなく、ニュースバリューがないから、マスコミは報道しないし、報道されても視聴者は関心を寄せない。」

 

神保「しかし。ネット上で吹き上がっているような話ならば、放っておいてもいいかもしれないが、今回は、街頭でマイクでヘイトスピーチをしている。それを放置している周りも含めて、動画で世界に流れている。放っておいていいのか。

その時に、公権力による規制を呼び込むと、表現の自由に抵触する可能性がある。市民的なレベルで、ブレーキがかかればいいんだけど、それも無関心、という現状では。」

 

宮台「2ch系ウヨブタは、右翼の名に値しない。鬱屈した不安な存在が、承認や溜飲下げを求めて吹き上がっているだけだ。多くの人が、そのような把握をしてきた。だから、ニュースバリューがない。しかし、外国人特派員から見れば、その国民的な深度が分からないから、外国人記者は受け取り方を迷っている。一番簡単なのは、法律で規制することだが、その法律が、別の表現に対して利用される危険性がある。では、法的に規制しないのであれば、マスコミや国会が、キャンペーンを張る必要がある。」

 

宮台「2ch系ネトブタと、在特会は、系譜が違う。ネトブタは、北田暁大が分析しているように、つながりやお祭りのためのネタとして、差別を使っている。在特会は、チーム関西が「特権叩き」で浮上してきた。公園を幼稚園の園庭として使用してきたことに対する抗議から始まっている。大阪の維新の会も、特権叩きから浮上してきた。被差別部落の特権や、公務員の特権を叩くパフォーマンスで、票を得てきた。

 

宮台「関西で育ったので、特権叩きは当然だ、と思う面と、しかし微妙だ、と思う面がある。映画パッチギ的世界を地で生きてきた。長じるにつれ、飲み仲間に朝鮮人や部落民が混交してきて、旧住民的な包摂によって、町の成り立ちを腹に収めて育ってきた。現在ではアファーマティブアクションが不要になっている状況で、京都市や大阪市のバス運転手の給料の高さは、確かに叩かれる弱みを持っている。」

 

宮台「そして、地域の共同性が空洞化し、新住民が移り住んできて、自宅に引きこもって隣近所と付き合わないような生活スタイルが広がると、経緯を知らないアファーマティブアクションは、新住民にとっては逆差別に見えてくる。

だから、在特会問題は新住民問題である。1980’sから表れてきた新住民問題の、一端。東京の在特会は、2ch系のネトブタが多い。共同体の空洞化によって鬱屈した不安な存在が、溜飲を下げたいがために繋がりを求めるのは、先進国どこでも報告されている。」

 

宮台「リアルの社会では、個人的で親密なつながりを持てない孤独な存在が、ネットを通じて繋がっている。性的マイノリティーなどが、そうしてつながるのはいいことだが、ヘイトスピーカー同士がつながって「自分はひとりじゃないお」などと思って差別をまき散らしている状況。」

 

神保「西洋の記者たちは、エドモンド・バークが言ったように、「悪が勝つためには、善が何もしなければいい」 と考えている。つまり、ヘイトスピーチを放置しているのは、それを認めて賛同しているのと同じことだ、と。アメリカではアファーマティブアクションによって、黒人女性であれば、かなり低い成績でもいい大学に入れてしまう。それをアンフェアだという人もいるが、在特会のようなヘイトスピーチをしたら、市民もメディアも黙ってはいない。この点は、どうなのか。」

 

宮台「安藤美妃問題と同じで、公共空間が存在しない。 公共空間は、自分とは出自も文化も、価値観や道徳観や性愛観も違う人間と、共存していくための知恵。日本には公共空間に関する歴史的伝統もないし。日本文化には、仲間(身内)とそれ以外、そして資本化して以降はお客さん、という分類しかない。共同体が空洞化すると、「ごく少数の友達以外はみな風景」という状況になり、「旅の恥はかき捨て」における旅の時間が長くなって、他者に対してとてもbrutalな振る舞いをしてしまう。身内と身内以外に対する二重規範が、近代以前の共同体の在り方。これは、近代社会とコンパチブルではない。」

 

神保「右翼はどこに行ったのか?」

鈴木「左翼の退潮と共に、右翼も細々しくなった。」

宮台「鈴木氏の一水会新右翼と言っているが、真右翼と言うべきで、戦前の民権派などに繋がるルーツがある。国家に依存していない。 反国家・反政府・そして天皇主義である。反国家・反政府でありながら天皇主義であることが奇異に思えるかもしれないが、これは南北朝時代南朝と思えばよい。国家や政府に抗う中で、天皇を押し立てて、義は我にあり、としている。そして民族派右翼はまた、国際派でもある。日本のパトリとして立つためには、イラクや朝鮮の「民族性」を尊重する。だから、排外主義や国家主義とも対立する。国際的にも、右翼の本流はこちら。」

 

外国人記者「自民党憲法草案に天皇を国家元首とする、とあるが、どう思うか。」

鈴木「反対する。天皇は政治に関わらず、文化に関わることが、日本の歴史にも適っている。」 

 

 宮台「ラストサムライと同じ問題で、西郷隆盛の南洲翁の問題でもある。天皇を押し立てて、正統性なり反逆を企てるときに、それが本当に人々の益になっているのか、実は私利私欲ではないのか。三島由紀夫全共闘に「天皇陛下万歳と言ってくれ」と言ったのも、半分はネタだが、半分は、心の底から湧きあがってくるようなパトリを確認したかった。三島は、天皇を崇敬することを教育で強制することを嫌った。それは、天皇陛下万歳と言って教師におべっかを使ったり、社会的競争で上に立とうとする道具にされてしまうから。だから再び、天皇を政治利用しないで、かつ天皇に絶対的に帰依せよ、という主張になる。」

 

神保「長州の山県有朋伊藤博文は、天皇を政治利用した。」

宮台「いま、八重の桜をしているが、福島の会津地方は奇妙だ。誰も嫌がっている火中の栗、京都守護職を買って出ている。薩長から賊軍扱いされたが、会津は自分たちが日の丸の中心にいると思っている。このような愛国=パトリの姿は、日本以外の国でも、標準的である。トルコにおけるクルド人エリート、アメリカにおけるさまざまな民族的出自。このような二重性を生きることの、愛国への緊張関係が、重要。」

 

おわり