jizakiの備忘録

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VideoNews「日本はどこに向かっているのか」鈴木×萱野×神保×宮台(視聴メモ)

【動画概要】

政治権力の源泉は利益分配で、投票者に利益が分配される。その財源(打ち出の小槌)=民主の埋蔵金、自民の日銀。しかしパイはもう増えないので、今後は不利益分配の政治を考えなくてはならない。

 

【視聴動画】

ニュース・コメンタリー (2013年07月27日)
「日本はどこに向かっているのか」

ゲスト:鈴木邦男氏(一水会顧問)、萱野稔人氏(津田塾大学学芸学部准教授) 

http://hlsp01.videonews.com/flash/?U2FsdGVkX18sgJf4VoL3bb4pG%2BmVAaBPfXv0D5GCXjE%3D

http://www.videonews.com/charged/news-commentary/0001_3/002878.php

 

【選挙結果】

2013.7.の参院選。議席は圧倒的に自公が勝ったが、得票率は、そうでもない。野党が小さく割れて、死に票が多かった。

萱野:共産党と自民党、古い政党が残った。この20年に生まれた政党が、全部消えつつある。政治再編を主導した小沢さんの生活が0だった。非常に象徴的。

 

民主党

宮台:2009年の「鳩山パッケージ」=「対米自立、そのための重武装化、そのための憲法改正、そのためのアジア信頼醸成」。これが、頓挫した。

 

【アメリカ】

宮台:アメリカは、二度と、鳩山のような戦前右翼的な動きを認めたくないだろう。日本の対米従属を進めるために、TPP。だから、今回の選挙で勝利したのは、アメリカだった。

 

小沢一郎

神保:民主党のアキレス腱、小沢の金権体質。 検察が、どうでもいい小さな件で秘書を挙げた。検察審査会も、訳が分からない内容。国策捜査。小沢をどうするか、で民主がガタガタになった。あのいいかげんな国策捜査を、問題にしないこの国は、大丈夫か?

 

萱野:別の見方をしている。小沢を脅威に感じた勢力が、小沢を挙げた。そして代表から降りて鳩山に変わったら、逆に議席が伸びた。そこを活かしきれなかったのが、民主の失点。

最大の問題は埋蔵金が出てこなかったこと。外交で失敗したこともあるが。今回の選挙でもそうだが、多くの人は、政府に無い袖を振ってほしい。お金がじゃんじゃん出てくるのを期待している。今回の自民党は、日銀だ、という。

お金があれば人は集まり、なければ人は離れていく。票も同じ。財源が無いので口論になって、民主は分裂した。財源がなくてもどうするか、というラディカルな覚悟があって政権を取ったのであれば、よかったが。

 

宮台:埋蔵金が出なかったので、財務官僚の力を借りて事業仕分けをすることになった。官僚と民主党の力関係が変わった。行政官僚とガチンコで喧嘩する発想は、幼稚。今回の自民がやったように、政権交代の前から官庁の中にシンパを作っておいて、政権交代と同時に一気にポストを入れ換える。

小沢は献金疑惑で下されて、党務に専念していたので、人脈が使えなかった。このように、民主党の使えるリソースがきわめて少なかった。

 

【リベラル】

神保:センターレフトのような人々は、どこに投票すればよいのか。民主党は受け皿にならなかった。ファーレフトの社民・共産。共産は少し伸ばしてるが。

 

【逃げ切り世代】

宮台:50代、60代は、退職金・年金をもらって隠居するためには自民党に入れるしかない。褒められた態度ではないが、合理的ではある。この国という船が沈む前に死ぬでしょう。

 

【保守化?する若者】

宮台:問題は自民に投票する若い世代。危機感がない。沈みつつある船、という認識がない。

鈴木:自民が投票権を18歳以上とし、ネット投票も狙っているのは、自民の票が増えると踏んでいるから。18-19歳が、何か考えて投票権を要求しているからではない。婦人参政権が実現した時に、こういった人がいる。「これで自分とこの票が増える。奥さんは、旦那の言う党に入れるから。」こんな風に舐められていていいのか!と。

宮台:保守の意気があればいいのだが、自明性の域から出れていない。社会的人脈があれば、介護の現場、生活保護の現場が回っていない、ということが分かるはずだが、そんなネットワークを持っている者はいないので、危機意識がない。

萱野:パイが縮小している、という意識は、それなりにあると思う。しかし、そのパイをどう維持・分配するか、という意識ではなくて、そこにどうしがみつくか、こぼれおちたくない、という方向に意識が進んでいる。防衛的になって、他者への攻撃に結びつく。

学生に「なぜ投票に行かないの?」と聞くと、「私が行っても変わらないから」と強弁する子もいるが、本音は、「投票・政策・国会が良く分からない」から。国会でパイを分配している、投票しない奴には分配されない、という政治力学を分かっていない。

その上で、パイにはしがみつきたいから、変な寄生虫(パラサイト)は排除したいから、排外主義や生活保護批判、保守化になっている。

jizaki:日本の公民科教育の問題でもある。

 

【権力の源泉】

萱野:今の民主主義社会における政治家の権力の源泉は、ものをあげること、分配すること。民主党はコンクリートから人へ、というスローガンで当選し、公共事業から福祉へと、分配先を変えた。しかし、分配していることには変わりない。

パイが縮小する中で、自民党は、日銀という打ち出の小づちを編み出し、パイを大きくして多くの人に分配するよ、というスローガンで勝った。

今後、社会システムを維持するために、利益ではなく不利益の分配をせざるを得ない。増税か、給付削減を、どう分配するか。不利益の分配は、近代民主主義の歴史の中で、一度もやったことがない。

 

宮台:不利益分配を受忍するための感情的ベースを醸成するために、地方分権してスモールユニットにするしかない。スモールユニットなら、なんであいつらの為に、という感情が、受忍しうる。

 

原発

萱野:原発に対する選挙民の意識は、短期と長期で考え分ける。原発止める、という世論調査が出ているが、これは長期。自民が勝ったのは、景気という短期。

 

【改憲】

次の国政選挙が3年後で、改憲は3年ではできない。3年、政権を安定させて、次の選挙に勝ちたい、そして改憲したい、という安倍さんの個人的願望。そのために、社会保障の不利益分配や財政の健全化を骨抜きにする可能性が大きい。

今回の自公の得票率が51%で、これでは国民投票で会見を覆される可能性がある。そうすると政権が吹っ飛ぶ。国民の大多数の支持を取り付けなければならない。

憲法改正の前の、安定政権。安定政権のための、ばらまき。このばらまきが、沈みかけている船を徹底的に再起不能にする。

利益分配の政治をする限り、日本の再生は無い。

 

神保:今回の自民の得票は、殆ど組織票。その組織票は、既得権益にぶら下がったもの。既得権益の水脈に沿って利益分配が為される。

 

おわり