jizakiの備忘録

動画や本などのメモ、etc

VideoNews「日銀は日本をデフレから救えるのか」北野、萱野、宮台

【概要】

日銀を恫喝して「量的緩和」を行っても日本経済は成長しない。グローバル経済の荒波を緩和しつつ「成長経済」から「成熟経済」へ転換する政策が必要。

 

【動画】

(2012年12月08日)マル激トーク・オン・ディマンド 第608回

北野一(エコノミスト)×萱野×宮台

http://www.videonews.com/charged/on-demand/601610/002606.php

を見てメモ。

 

【2012末の選挙に向けて】

  • 2012年末の国政選挙における「争点」の作り方は、2005年の小泉政権が大勝した選挙に似ている。
  • 2005年には、構造改革と言いながらも、「成長産業」への移行を政策的に誘導することなく、従来からの「重厚長大型の産業(=経団連)」が自由にふるまえるような規制緩和(派遣・非正規雇用など)を行い、格差が拡大した。小泉は反対者を「抵抗勢力」と呼び、マスコミやネット世論(ネットも馬鹿が多い…)も「公務員憎し」で「郵政民営化」に賛成した。
  • 2012年末の選挙は、日銀を悪役に仕立てて、「日銀」さえ叩けば世の中良くなる、というイメージ戦略のようだ。

 

【金融政策】

  • 金融政策が焦点化する背景として、先進国では中央銀行がそれ以上「金利」を下げられなくなった(ゼロ金利)ので、貨幣を市中に流す「量的緩和」を行っている。
  • 特に欧米の中央銀行は、国債を「無制限」あるいは「無期限」に買い取って「貨幣供給量」を増やす、という政策を行っていて、その「結果」であるかは明らかではないが、アメリカやドイツが「株高」になっている。
  • 「日本も欧米に倣え」と言う、ある種のファッション(流行)政策である。しかし、日本経済の状況が、欧米の先を行っているとしたら?(萱野×水野が新書『超マクロ展望』で、その議論をしている。)
  • 日本円の総量を「貨幣量」と言う。90年代の貨幣量は40兆円、それから20年かけて量的緩和をして、今や貨幣量は120兆円である。しかし、90年代から物価はほぼ横這いである。

 

【様々な金利】

  • 「企業融資」や「住宅ローン」、「株主配当」も金利の一種で、それらは高いままなので、日本は高金利だと考えられる。
  • 特に、「株主配当」=ROE(Return of Equity、株主資本利益率)は80年代の2%から、10%近くまで上がっている。これは、金利の暴騰と言っていい。株主配当が高いから、給料が増えないと言える。
  • 現在の日本企業は、こんなに高い金利を払えるほど売り上げはない。

 

【グローバル経済】

  • グローバル化によって、「賃金」は人件費の「低い国」の額へ収斂するが、「資金」は利潤率の「高い国」へ収斂する。
  • つまり、先進国で働く「労働者の賃金」は、新興国で働く労働者の賃金に近づいて安くなり、「投機マネー」は利回り(利潤率)の高い企業に向かうため、多くの企業は「株主配当」を大きくせざるを得ない(株主資本主義)。
  • 「利潤至上主義」、「株主至上主義」が行き過ぎていて、労働者の「ワークライフバランス」や「地域貢献」が後回しにされている。

 

【賃上げ】

  • 「人口減少社会」では、「賃上げ」が「デフレ対策」としてベストである。個別の企業が賃上げを行いにくいとすれば、どうすればよいのか。経済団体がコンセンサスを結べるか。難しいいい・・。
  • 共産党の案は、「内部留保(企業のタンス預金)」に課税する、というもの。しかし、この案は賃金を下げる圧力として働く危険もある。
  • 賃上げの政策としては、福祉を実物配布してはどうか。病院や保育所を作って、安くサービスを利用できるようにし、雇用を増やすことができる。失業率が下がれば、賃金も上がる。

 

切断操作の危惧】

  • 部分最適解しか知りえない個人が集まっているが、全体最適解を考えなきゃいけない、という規範が必要だ、という想定からスタートしなければいけない。
  • 余裕のない人々は、社会学で言う「切断操作」つまり、「あいつらが悪いんだ」という言い方が台頭する。

 

【追記】

その後の選挙では、脱原発で票が色々な政党に散らばって、自民が低い得票率で大勝し、日銀を恫喝して政府の言いなりにしようとする「アベノミクス」が進められている。