jizakiの備忘録

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VideoNews「タネをめぐる日本と世界の状況について」

【概要】

70年代までに農家が自家採種していた野菜がおいしくて安全。高度成長期に農薬と化学肥料に適合的なF1品種(まずくて危険)が市場を席巻した。今後の「ロハス農業」では在来品種が高付加価値となる。

 

【動画】

http://www.videonews.com/charged/interviews/001999/002484.php

(2012年07月26日)西川芳昭名古屋大学大学院教授 インタビューズ 

(利き手:神保)を見ての、メモ。

 

【日本の種】

  • 60、70年代までは、日本の農家は自前で種を生産していたが、平成に入って特に、そのような光景は見られなくなった。
  • 昔の農家は、自分たちの家族が食べるものを作っていたが、「農業基本法」が出来て以来、農家が専門化していき、種を種苗会社から買った方が「生産性」が高いと言われ、野菜の形や色がばらばらだと「流通」に乗りにくいので、「F1品種」=「一代雑種」の種を外から買うようになった。「おいしさ」は、農家が店頭的に作っていたものの方が上のことが多い。
  • 南アフリカやオーストラリアのような、乾燥して病気にかかりにくい地域で「サカタ」や「タキイ」などの種苗会社が生産しているものを購入している。
  • 日本の野菜の自給率は8割だが、種の国内生産は種苗会社が主で自給率2割。種は、農業の生産コストとしては大きくない。

 

【固定種=在来種】

  • 古来からその地域の農家で育てられてきた「固定種」または「在来種」と言われたものは、今は減ってきている。強い選択圧はかかっていなので、変異は結構あるので、<固定>という言葉はやや語弊がある。
  • 「固定種」も同じ地域で育て続けていると、病気に弱くなってくる(近交弱勢)ので、愛知のダイコンとヨーロッパの大根を交配(雑種強勢)して血を更新する必要がある。それに対して、F1は病気に強い形質を備えている。
  • 「固定種」は、生産農家にとって美味しい、という形質は揃っているが、耐病性などはばらつきがあるので、病気が流行っても全滅することはない。
  • 「固定種」では2~3週間かけて収穫するが、「F1品種」では成長・成熟が揃っていて、2~3日で収穫する。

 

【F1品種】

  • 「F1品種」の危険性は、農業経営面としては病気で全滅する危険性がある、ということ。また、「F1品種」の種を作っている会社の畑では、父親系と母桶系の間でだけ交配が起こるように、「自家不和合性」の遺伝子が組み込まれている。
  • 利用されている「自家不和合性」の遺伝子は種類が少ないので、これも遺伝的な脆弱性の可能性がある。
  • 野菜の「F1品種」は、種を取ってもF2ではばらつきが大きくなる。トウモロコシなどでは、F2は多少ばらつきは小さいが、収量はやはり落ちる。
  • 長野県では、村で父系と母系の植物を交配してF1を作っているところはある。

 

【世界の種】

  • 世界の種苗のマーケットは、寡占が進んでおり、数十年前と比べて、品種の選択の幅は著しく小さくなっていっている。モンサントなどの欧米の少数の企業がが圧倒的なシェアを握っている。買収で資本集中が進み、上位10社で73%、上位3社で53%となている。
  • 放送局、空港、電源などは、外資の比率に制限があるが、種は外資の規制がない。途上国では、多国籍種苗会社が現地に子会社を作って、その地域の種を買い占めている。
  • ヨーロッパでは、地元の種苗会社が品種ごと多国籍化学会社に買い取られて、利用価値の低い固定種が捨てられるケースも出ている。

 

【今後の日本】

  • タキイ、サカタは種苗会社としては大きいし、技術もトップレベルだが、資金力では多国籍の「化学会社」と比べると小さい。
  • 日本では、まだ問題意識が高まっていない。TPPでアメリカのルールが日本で通用するようになると、影響はあるだろう。ただ、地域で伝統野菜を作っているところは、魅力的な市場ではないので、相手にしないであろう。
  • 日本の各地域で、固定種を作っているのは高齢者。また、40代の農業者も注目し始めている。
  • 2004年発効の「国際植物遺伝子資源条約」には、農家の権利が明確に規定されている。日本はまだ批准していないが、その中には種を農家が管理する権利が記されている。今の状態では、日本の農家は権利的に丸裸の状態。この条約は知財であり、育種家の権利と干渉するので、農水省は農家の種を管理する権利としては捉えていない。

 

【jizakiの見立て】

ポストTPPのLOHAS経済では、固定種=在来品種がウケる。