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VideoNews「なぜ今債務帳消しが必要なのか」北沢×宮台×神保

【概要】

世界的な「構造的貧困」の問題と、「ネオリベ」の問題。IMF・世銀の「構造調整プログラム」の酷さについて。貧困根絶のプログラム。

 

【視聴動画】

マル激トーク・オン・ディマンド 第223回(2005年07月07日)

「なぜ今債務帳消しが必要なのか」
ゲスト:北沢洋子氏 (途上国の債務と貧困ネットワーク・共同代表):73年「アジア太平洋資料センター(PARC)」の設立に参加。
 
【融資の行先】
貸した金が「独裁者のポケット」に入ってしまった件もある。不要な巨大プロジェクトを押し付けて、それが失敗した件もある。(jizaki:融資の審査として有り得ねえ。)そして、貸し手責任が追及されていない。
 
【無駄なダム】
先進国では、ほぼダムを作りつくした。ダム作りは先端技術なので、どこかで使って経済回さないともったいない。そこで、途上国にODAで金貸して、その金で自国のダムを買わせて、金返せ、という構図になった。
ダム屋は、効果は大きく、日ような小さく見積もっていう。ところが、ダムはその地域の実情に合わせて作らないと、役に立たない。土壌、気候(雨の降り方など)のあり方が違う。すでに砂で埋まったダムもある。結局、効果は小さく、費用は高くついている。
 
【融資の種類】
人口が多かったり資源がある国である中所得国に対しては、「プロジェクト融資」で、ダムを作ったりする「インフラ融資」。アフリカの多くの国のような低所得国に対しては、「政治的融資」=「政策融資」が行われた。IMF世銀による「構造調整プログラム」を執行させるための融資。この「構造調整プログラム」は、関税自由化や財政均衡を求めている。関税自由化で国内産業潰れ、財政均衡低所得者層を守り育てられず貧困層が増え税収が減る、という矛盾した政策。
 
【構造的貧困】
先進国の指導者は、変動金利制の意味を理解していない。途上国には、サラ金並みの金利で貸している。先進国は、とっくに取り返しているもの。しかし金利分の借金が残っていて、それが途上国を支配する政治的な道具になっている。帝国主義的搾取、つまり軍事的覇権を使った経済的覇権の行使。「構造的貧困」は、個人の努力でどうにもならない。
 
グレンイーグルズ・サミット】
かつて国連は、経済開発から社会開発にシフトして、高らかに宣言したが、2000年までに定めた目標は達成できなかった。原因は、南の国が債務に手足を縛られて、うまく動けなかったから。
そこで、最貧国18か国(アフリカ14か国)の債務帳消しを決定。(もともと約束していたのは48か国だったのに、削りすぎだろ。)「2国間債務」はケルンの会議で帳消しを決定済み。今回、帳消しすべき債務とされたのは「IMF=世銀の持っている債務」。
しかし帳消しと言っても、IMF=世銀の設定した条件付きで、その条件が搾取的。
 
【破産法】
日本の「多重債務者」の借金帳消しにおいて、条件付きになるのとは、少し訳が違う。「借金は子々孫々返さないといけない」というのがあって、「お爺さんお借りた借金を返すために孫が悲惨な目に合う」という状況を何とかしよう、ということで「破産法」が出来た。
 
【金利を返すための借金】
しかしこれは個人と企業に適用されるもので、国家には適用されない。
途上国の重債務貧困国は、債務はとっくに返している、つまり元金は返済済み。今「返せ」と言われているのは、「債務を返すために借りた債務」の分、つまり利息。
 
【命を削って借金返済】
借金を返している国は、貿易黒字や税金から払うわけだが、それが教育や医療と言った国民福祉を圧迫している。特に、子供の医療福祉を圧迫することで、その国の国力を構造的に下げている。
助かるべきエイズ患者や摂取されるべき子供のポリオワクチンに金が回らない。まるで、シェイクスピアの『ベニスの商人』で、血や肉(人間の命)で借金を返しているようなもの。
昨日借りた借金を返せ、と言っているのではない。お爺さんの時代の借金を命で支払わされている子どもを、借金から帳消しにしろ、という主張。
 
IMF=世銀】
普通の銀行なら不良債権で頭取が辞任したりする。世銀やIMFは、先進国が資金や人を出しているのに、その頭取や理事が首にならない。おかしい。銀行としての社会的責任を、果たしていない。
世銀の不良債権は、世銀自身の調査ですら34%もある。普通の銀行ならとっくに潰れてるか、自分の資産を売って経営陣は首だ。
 
【アフリカの人材】
20年前に比べて、アフリカの政府の人材のレベルは落ちている。政府の職員が、国連の書類の英語を読めない。何が大事なことか読み取れない。今の優秀な若い人は、大学卒業したら外資に勤めるか、西洋の援助を受けるNGOに勤めたがる。公務員は賃金低くて人気ない。賃金低いのは、構造調整プログラムによって財政均衡を求められ、公務員の給料を下げざるを得なかったから。政府の役人たる資格のない人が勤めている。
 
【シカゴ派経済学】フリードマン
財政均衡主義は新自由主義シカゴ学派がよく言うお題目。政府の赤字はその国の経済の信用力を落とすから駄目だ、と言う。強者と結託した経済学者の犯罪的言説。それに当の経済学者がいる先進国(米独日)の政府が大赤字なんだし。たしかに、何のコストも払わずに均衡できるならそれに越したことは無いが、ちょっと待て、と言っているのがニュー・ケインジアン
財政均衡の為に国家の収入源たる国営企業を売り払って「民営化」しても買い取るのは外資だし、公務員の「給料」減らしたり再配分を辞めたりしたら「購買力」が無くなって市場が縮小するし、財政均衡がますます図れなくなる。だから、財政均衡を図るためにも、まずは贈与によって所得と購買力を上昇させて景気を浮揚し、そこから税収を得るのが王道だろう、と。
世銀IMFが押し付けている「構造調整プログラム」における「財政均衡」とは、つまり貸した金を返させるためにその国の経済を搾り取っているわけ。途上国の持つ社会インフラを切り売りしてでも、返せ、と。
 
スタバで357円のコーヒーを買うと、生産者に落ちるのは10円以下、残りは全て、コーヒーを作ってもいない人間による中間搾取。
60年代に、アフリカはモノカルチャー経済から抜け出そうとして、頑張って工業化を進めようとしていた。しかし、世銀のエコノミストたちは「無駄なことはやめろ、お前たちは一次産品を作った方が効率的なんだ」と言って介入した。新古典派経済学の出発点になった、リカルド―の「比較優位」説。どんな国も、自分の最も得意な分野に特化した方がいい、という。比較優位が成立するのは、いくつか条件があるが、それを見ていない。天候や病害虫などの環境変動で壊滅的な被害を受けることがある、ナタデココが飽きられたら、売れなくなる、一次産品の価格をコントロールする多国籍企業の存在、など。そういうことを勘案していない。
 
【工業化に成功した日中】
日本で「トリックルダウン」が起こったのは、徹底的な農地改革をやったから。農村の悲惨な貧困(凶作の年に娘を売る、という話)が解消された。累進課税の導入。この二つが効果あった。
また、日本が明治維新で工業化に成功したのは、江戸時代末期に豊作が続き、識字率が半分を超えていたから。
中国が今工業化に進めているのは、共産主義時代の再配分と教育による。字が読めれば、工場で働ける。
 
【工業化に成功しないアフリカ】
アフリカでは、この段階のプロセスがまだ進んでいない。だから、多国籍企業はアフリカに行かない。
債務帳消しになって、少しは肩の荷が軽くなったが、貧困をなくすためには新しい資金を入れないといけない。そこで、第二のマーシャルプランをやろう、アフリカに「お金の雨」を降らせて経済を立ち直らせよう、としている。しかし、マーシャルプランが成功したのは、戦争で工場が破壊されたヨーロッパ。資金を入れて工場を作れば復興する。
しかしアフリカは工場を回すための教育的人的インフラがないので、お金があふれかえって弊害が出るんではないか。アフリカは冷戦の時に援助合戦でいい目を見た。援助が無くなって、経済が回らない。だからお金を入れないといけない、という話は分かるが。
 
【アフリカではトリックルダウンしない】
途上国では、貧困層に食糧、ガソリンを補助金で与えていた。独裁者でも、暴動を恐れてこの政策はやっていた。それが、構造調整プログラムで削除される。そして、貧乏人が飢えて、プログラムが始まってから飢餓人口が三倍になった。
構造調整プログラムによって一部は富裕層になったが、貧困層が増えて、格差は拡大している。「トリックルダウン(滴り落ち=パレート最適)」は一向に起こらない。
何故かというと、途上国では富裕層は所得税をほとんど取らないから。殆どの税は間接税。むかし人頭税があったので、所得税はとても取れない。
 
【補助金漬け】
沖縄の基地の補償金で土建工事でお金がコンクリートに消え、圃場整備や港湾整備で農民や漁師が土木工事業に転職し、で、こういう土木事業は金をつぎ込まないと回らないから、補助金漬けになる。こうして、自立経済圏が完全に破壊され、依存経済から脱せない。
 
【ビルゲイツとソロス】
 ビル・ゲイツよりソロスの資金の方が危険。Open Society Institute(開かれた社会機構?)に金を出していて、ウズベキスタンなど中央アジアで起こる騒動を見ていると、そこの学生運動や放送局に流れている。民主化を応援して、グローバル化に都合の良い国を作って利用しようとしている。やり方がきな臭い。
ビルゲイツは、自家用飛行機でアフリカに降り立って、「エイズの患者はいないか」と言って、患者を見つけて病院に連れて行ってポンとお金を払う。ゲイツの財産は最貧国とされた48か国の総GDPより多い! 募金は税金かからない対策になるし、ポピュラリティーも上がる。やり方がまだ単純。
 
ネオコンは、元々はヨーロッパで迫害されたユダヤの中から始まった。社会正義の実現を理念とし、ニューディーラー的な社会的再配分も支持していたが、ブッシュ政権を支持した時に他の保守勢力と「寄り合い所帯」の中で一体化してしまい、グローバリズムを追及するようになった。頭が悪い連中が、都合のいいところを取り集めたのが今の思想・施策。
経済学者の多くは利権集団で、強者にとって都合の良いイデオロギー装置を製造する技術者。とくにアメリカでは、研究費の多くが民間から貰っているので、そうなる。
ネオコンはもともとは、「東側の独裁者」を取り除いて、民主化するのを支援していたが、そのやり方を「南の国」に対してもやろうとしている。工業化した東側と、北側によって構造的貧困に陥れられている南側では、事情が違うのに。
 
【アフリカも少し力をつけつつある】
アフリカの多くの国は服政党制に平和裏に移行してきた。とくに、独裁から選挙で政権交代したケニアの大臣は、メキシコのカンクンで行われたWTOの会議で大演説をぶって、会議を潰した。
アフリカの小農民が協同組合を結成して、国を超えて連帯している。その代表がアフリカ各国政府と交渉している。そして、アメリカ政府が莫大な補助金をつぎ込んで安い食料(穀物)を作って世界中に売って、農民を破産させている問題に対して、取り組んでいる。
 
【トービン税】
アフリカへ資金援助すにも、先進国も財政逼迫で出せるパイがない。そこで、どこかから出さないといけない。航空券に税金をかけるか、トービン税(国際通貨取引に税金をかける)か。
国債通貨取引のほとんど(80%)はアメリカ、日本、ヨーロッパで行われている。税金をかけるのは誰か、誰の収入になるか、揉めていたが、その取引所のある国に、ということになってきている。
為替(国際通貨取引)の97.5%が投機目的で、実物経済の輸出入に伴うのは全体の2.5%。だから、税をかけてもあまり実体経済に影響ない。しかも、0.02%という薄い税率を提案。これがODAと同じ額。常時この薄い税率を設定し、税収の20%を国内福祉に、80%を途上国援助に充てよう、という案。そして、ファンドが通貨を狙い撃ちしたときなどの通貨危機の際には、100%に挙げよう、とされている。
アメリカは抵抗しているが、ヨーロッパは自分たちだけでも先にやってしまおう、と考えている。対人地雷に対する条約と同様に、大国抜きで先に結んでしまって、後から大国を追い詰める。アメリカはすでに環境分野で追い詰められているので、効果あるかも。
 
【貧困根絶のコースメニュー】
① 債務帳消し
② ODA
③ トービン税・飛行機税
④ IMF・世銀の改革
⑤ 多国籍企業の規制
全てを行わなければならない。
「ミレニアムゴール」とは、2015年までに貧困層を半減しようという計画。
⑤については、国連は「企業の社会的責任」の認証制度を進めようとしている。これは優等生主義的な制度で、上手くいかないだろう。多国籍だから。
様々な国際条約や国際機構が、多国籍企業の規制に使えないか。賄賂を使えば国際裁判所に訴えられる。京都議定書だって、多国籍企業を規制できるだろう。
IMF世銀は巧妙だから、相当の抵抗が予想される。
 
【アメリカ経済】
前FRB議長のグリーンスパンは、アメリカ経済を立て直して「アメリカ中興の祖」とも言われるが、別の見方をすれば、投資先を失った資金がじゃぶじゃぶ暴れまわって、「グリーンスパン爆弾」を仕掛けた、とも言われている。(jizaki:この動画が2005年。2007年にはサブプライムローンに始まる世界金融危機が発生。)
 

おわり