jizakiの備忘録

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VideoNews「監視社会とどう付き合うか(一部)」東×宮台×神保

【概要】

「成長なき社会」の不安が、「監視=セキュリティー」を求めている。宮台の「共同体の再建」構想と、東の「多様な人間が共存するための監視社会」構想。

 

【動画】

http://www.videonews.com/charged/on-demand/0191191200/000598.php

(2005年01月21日)マル激トーク・オン・ディマンド 第199回

ゲスト:東浩紀

 

【セキュリティ】

  • 「子どもの安全」が、社会の中でインフレを起こしている。「セキュリティ」が巨大産業になってきた。「安心・安全」がマジックワード、マーケティング手法になっている。
  • 子どもの安全が至上命題だとして、性犯罪者を監視することが、有効か。それより、親による虐待のほうが発生率高いし、防ぎ方が難しい。
  • 本人の許可や裁判所の令状なしでも、コンビニやATMの防犯ビデオの映像が警察に渡されることを市民が当然と思うようになっており、警察やセキュリティー会社の利権が増大している。

 

【地域共同体】

  • 95年ごろ、「地域の空洞化」が加速した。テレクラ、児童ポルノ、買春などを規制する条例を制定する動き。地域のトピックが、子供に集約された。子どもを守る、という理念には賛同するが、話が展開する時の動機は、地域社会が空洞化したことの埋め合わせ、代償行為ではないか。子どもを大事に思う自分を再確認しようとしているだけ。
  • アメリカ流のトクヴィル主義=アソシエーション=結社は、目的別に集まる。メンバーは入換可能で、多様に結社を作るが、個人由来する共通のプラットフォーム=教会が存在。プラットフォームに乗らない人間は排除。契約書=マニュアルと自発性の世界。
  • 欧州流のスローフード=コミュニティーは、相手の主義・主張は置いておいて、一緒に飯を食うことが継続し、束縛にもなる。ロールと善意の世界。

 

【監視技術の使い方】

  • 社会全体を覆う規範意識や合意形成で構成員が結ばれなくなったことは、価値観の多様化とも相関していて、望ましいことでもある。監視技術を精緻化して安心を供給するにしても、何を得るのか。それは、多様な人間の共存であるべき。ライフスタイルの多様化が進むことと、監視社会化が進むことは、表裏一体。社会の統合原理が、合意形成から監視技術へと移行しつつある。
  • しかし実態は、深夜たむろする若者や、売春婦を取り締まるまど、軽犯罪の取り締まりに利用されている。グランドビジョンがない。同様に、パスポートに生体認証を入れるなら、もっと国内に多くの外国人を受け入れるべき。

 

【人間の飼育法】

  • これまでの近代社会では、「牧人主体」を訓育することで、威嚇しなくても、話し合いで社会統合が出来た。しかし牧人主体の訓育には時間やコンテクストのコストがかかる。フーコードゥルーズの監視社会論では、主体化のコストを軽減するために、監視技術による「環境管理型権力」が台頭する。
  • ある時期から「人格障害」という概念が出てきたのも、象徴的である。みんなが動物的に振る舞っても、社会が回るような仕組み。
  • 宮台は、地域社会などの地縁・血縁のつながりに埋め込まれた主体化によって、監視化に向かわなくていい社会を構想。コミュニタリアン
  • 東は、地域の統合原理が緩んでも、多様な人間が共存できる方がいい、と構想。匿名の浮遊感というのは、いいのでは。日本の伝統に回帰してハードランディングするより、この浮遊感を活かせないか。マイノリティーを包摂するための技術として考えるべき。
  • 他人に承認されたいと思わないのが、「動物化」する人間。自分のある瞬間の身体的な感覚を、他者と感想をやり取りしていく中で修正していこうとする動機を持たない(社会性がない)。コンビニやITは、他者性・社会性がいらない。
  • 実際の動物は、意外と他の動物からどう思われているかを気にする奴もいるらしい。

 

【監視技術】

  • 電子的サービスの提供と電子的監視はイコール。アマゾンのリコメンドなど。監視とサービスが一体化した概念=言葉を作り出す必要がある。監視の主体も客体も拡散していて、昔からの概念は使えない。
  • ミーガン法」は、性犯罪の累犯者を排除によって脱社会化を進めることになり、再犯を押しとどめるように働く共同体による包摂の力が、逆に効かなくなりがち。

 

【ネット社会化】

  • 日本では「ブログ」が「コミュニティー(共同性)」のツールになっているが、アメリカでは「パブリッシュ(発信、意見表明)」のツールになっている。
  • 2ch」は、階級分化していない(つもり)の日本の「大衆社会」の反映だから、しょうもない炎上も起る。一億総中流の幻想が解体しつつある中、我々のコミュニティーとしての唯一の共通関心が「子供問題」。

 

【社会を構成する理念】

  • 理念のない社会になっていて、ポピュリズムが勝っている状況。
  • 多様な人間がそれぞれの「まともさ」を追及して行く、という近代の理念は、公準として立ててよい。

 一部おわり