jizakiの備忘録

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VideoNews「TPPで食の安全は守れるのか」藤田×宮台神保

【概要】

国内の農家と消費者を共に守ろうとする企業活動を行っている、株式会社「大地を守る会」 の代表を招いて、TPPの危険性や日本の農政の抱える問題を議論。

 

【見た動画】

http://www.videonews.com/charged/on-demand/551560/002132.php

(2011年11月05日放送)VideoNews マル激トーク・オン・ディマンド 第551回

「TPPで食の安全は守れるのか」ゲスト:藤田和芳氏(大地を守る会会長)、聞き手:宮台真司神保哲生 を見て、メモ。

 

【大地を守る会とは】

「大地を守る会」の代表。無農薬・減農薬食材の宅配事業。1975年設立。NPO団体から株式会社へ発展・成功した「ソーシャルビジネス」の草分け。生産・流通・消費をつなぐ市民運動であり、企業活動。

生産者と消費者をつなぐ「二大巨頭」は、関東の「大地を守る会」と、関西の「らでぃっしゅぼーや」。「大地を守る会」では、↓のサイトで風評被害に苦しむ福島と北関東の農家の「頑張ろうセット」を販売している。注文してみようかな。

https://store.daichi.or.jp/GoodsDetail/index/itemCode/01238252

 

【ソーシャルビジネス】

株式会社になったのは、「生産者も消費者も同じく株主になろう」という発想。生協は消費者側に、農協は生産者側に立って、都道府県別になっている。生協は役所の認可が必要で、農政に文句を言いにくいから。人に良いことをしてお金が回るのがSocial Bussiness。

 

【アメリカの情勢】 

アメリカは食料輸出国なので、輸出に向けた産業界の政治的圧力が強い。

アメリカでは、消費者運動によって「原産地表記」の法律が成立したが、業界団体の巻き返しによって、法律の実施が先のばさされている。

アングロサクソン系のアメリカやイギリスは、遺伝子組み換えにイケイケ。ヨーロッパ大陸は慎重。

【TPP参加の経緯】

TPPが農協など農業関係者だけの問題であるかのように矮小化されて報道されているが、消費者の問題である。 

経団連がTPP参加を推進しているので、民法はTPPの問題を報道しにくいであろう。NHKはスポンサーとの関係はクリアしてるが、役所との関係が残る。

経緯については、以前にもこのブログで書きました↓。

2013/2/26の日記 ニコ生「だからTPP参加はダメなんだ!」中野剛志×津田大介

 

【TPP、農業への悪影響】

食の安全は、エネルギーの安全と同様に、共同体の安全保障の重要部門。TPP参加は、日本の食糧の安全をどうするのか、という問題。

① 現在の食糧自給率は40%で、参加すると14%になる、と官僚が計算している。

② 食べ物は地域に固有の文化である。

③ 安全基準が、緩いアメリカ基準になる。

 

【TPP、消費者への悪影響】

①「原産地表示」を続けると、日本の消費者はアメリカの農産物を買わなくなるから、これが「非関税障壁」だ、として撤廃を求められる可能性がある。

②「残留農薬基準(ポストハーベストなど)」が緩くなる。

③「遺伝子組み換え食品」の表示をするな、とアメリカはEUに要求している。日本がTPPに参加すると、「非関税障壁」だから表示するな、と言われるだろう。

④「食品添加物」が、日本で認可されていないものでも使用される可能性がある。

⑤「牛肉の輸入条件」では、アメリカで狂牛病が発生しても牛肉の輸入を止められない。

アメリカの要求は、日本にほぼそのまま通るので、①~⑤の安全基準項目は全て通るだろう。

 

【日本の食の安全基準】 

日本の食品の安全基準が高いのは、生産者と消費者が意見を言ってきたから達成できたことだろう。遺伝子組み換え作物が表示しないと売れなくなったのは、生協などの運動の勝利。

牛肉の全頭検査の要求や遺伝子組み換え作物への反発は、NHKの功績が非常に大きい。

日本では、栄養価の高い低温殺菌牛乳が酷い扱いを受けている。ヨーロッパでは人に飲ませてはいけない国もある。高温殺菌牛乳は、殆ど牛乳とは言えない。牛乳ではこの体たらくなのに、なぜ牛肉のBSE遺伝子組み換え作物では敏感なのか。歴史的経緯であろうか。

 

【TPP後の日本の食の世界】

大地を守る会などは、原産地表記が残るだろう。しかし、低所得者層は原産地表記されない、基準の甘い食品を買うようになるだろう。国内の「食の安全の格差」が、一層進むだろう。

自由貿易、自由競争では低価格に平準化される。アメリカやオーストラリアのような大規模農業や人件費の安い途上国で作られた農作物に、日本の農業は価格面で勝てなくなって担い手がいなくなり、自給率が下がる。

食料品店が階層分化したら、食の安全に対する意識があって金銭的に賄える人が行く食料品店には安全な高い食品があり、意識がないか、あっても買えない人が行く食料品店には安全基準の低い安い食品がある、という状況になる。いじめや差別の因子にならないとは限らない。 

   

【日本の農政】

TPPに入らなくても、日本の農業には問題山積。

日本はカロリーベースで40%の自給率。インドや中国で肉食が増えている。飢えている人が10億人いる。今のうちから食糧自給率を上げておかないと、気候変動で世界的に不作が続くと安全保障上あぶない。

日本の農家はいくら大規模化してもアメリカの価格に勝てない。

政府から農家への所得保障は日本で15%、アメリカで60%、イギリス・フランスは90%。日本の農家が過保護だ、という言い分は理がない。

偽装農家をチェックしながら、インセンティブを用意する必要がある。

日本の若者で、農業やりたい人は増えているが、土地の確保などの「参入障壁」が高い。

「農協」は「記者クラブ」と同じく、初めはいい目的のために出来た。それなりの功績も挙げた。しかし、今では利権集団となってしまっている。

 

【jizakiの考え】

成長無き成熟社会へ突入している日本社会で、生き残る農業の形は? 有機農業で安全でおいしいイメージをもった「高付加価値」の作物を生産販売し、TPP後も生き残る。農作業したい人を畑に呼んで、農作業と作物を交換。とか?