jizakiの備忘録

動画や本などのメモ、etc

VideoNews「それでもあなたは食べますか」安倍×宮台×神保

【概要】

「ウワー、これいいにおーい! うまーい! (体に悪いと思っても)感動を禁じ得ない」という宮台さんの反応。話の流れは散漫だが、衝撃の添加物の調合技術の数々を紹介。

 

【動画】

http://www.videonews.com/charged/on-demand/0261261270/000663.php

(2006年04月07日)マル激トーク・オン・ディマンド 第262回

ゲスト:安部司氏(添加物アドバイザー・『食品の裏側』著者)

 

【安倍司】

  • 食品添加物商社の営業でトップセールス。味の魔術師、添加物の神様と呼ばれる。子どもが出来て、「おいしい、お母さんおいしい」と添加物の塊を食べているのを見て、自分も消費者だったと気付いた。俺が全身全能をかけて作った商品、会社は儲かった、俺も儲かった、ビルも建った。国の産業に貢献してるから国から褒められるんじゃないかと思った。みんな喜んでるし、産業効率、産業発展のためになってるし。違法性ないし、それどころか高齢牛や廃鶏などの、そのままでは使えない屑肉を、柔らかくて美味しい肉に変えてきた。
  • こういう話を聞くと、お母さん連中から「ひどいわ、騙すなんて」と言われるけど、例えばあなた、コンビニ弁当あの値段で作れる? 作ってられない。だから商売になる。『買ってはいけない』、『食べてはいけない』という本が売れたけど、不安を煽ったり、添加物を敵視して解決する問題じゃない。誰もが「安い、きれい、速い、美味しい」を享受している。光と影なんですよ。
  • 国はネズミで安全検査しているが、添加物単品ずつの検査。コンビニ・スーパーで売っている弁当類は全て、添加物がたくさん入っている。人間のような長命の動物が複合摂取した場合のデータは、現在消費者の体を使って取られていると言うしかない。
  • 添加物はこの社会の避けがたい構成要素になっている。どう付き合うか、という問題。

 

****** 添加例 ******

 【豚骨スープ】

インスタントラーメンの「豚骨スープ」は、豚骨スープを濃縮して水分を飛ばしたものではない。それは、10種類の添加物と、10種類のエキス(鶏がらエキスなど)からなる。

  • 甘草エキス・・・焼き豚などの塩辛いものには必ず入れる。甘さが出る寸前で止めるのが調合のコツ。塩辛さを感じなくなる。
  • 増粘多糖類・・・加熱せずに片栗粉のようなとろみを出す。
  • 酸味料(リンゴ酸、クエン酸など)・・・味の切れが良くなり、スープを最後まで飲めるようになる。
  • 脱脂粉乳・・・白濁させ、豚骨スープ然とした色を出すため。

 「添加物」という言葉からは、「基体となるsubstance(食品)があって、その上に味を修飾するものとして加えられるもの」というイメージがあるが、例えば上記の「豚骨スープ」という「元の食品」はなく、各種の添加物とエキスだけを使って「豚骨スープ」の味に擬態している。

 

【コンビニ弁当】

そぼろ弁当

  • グリシンNH2-CH(H)-COOH・・・アミノ酸の一種で、甘みとさわやかな酸味があり、保存性がある。ご飯に加えて炊くと「照り」が出る。コンビニの「おにぎり」には、これを入れないと売れない。工場で、酢酸CH3COOHに塩素Cl2を反応させ、モノクロール酢酸CH2ClCOOHを作り、アミノ基-NH2で置換して作る。
  • 「一括表示」・・・「酸味料」や「pH調整剤」、「乳化剤」などは、そのカテゴリに分類される添加物を2種類以上含むときの表示方法。
  • 増粘剤(キタンサン)・・・カビが吐き出すネバメバ。タレをネバネバにして肉に絡みやすくする。片栗粉だと、日が経つと粘りが無くなる。
  • 着色料(カラメル)・・・そぼろ肉を染めたのであろう。安いコーラの着色にも使われている。
  • 野菜色素・・・赤カブや赤キャベツから色素を取る。
  • 紅麹・・・赤いカビが出す色素。
  • 合成着色料・・・赤色何号、など。石油から作るタール。

 

【コーヒーフレッシュ】

牛乳の脂肪などの乳製品では、ない。水にサラダ油を入れる。グリセリン脂肪酸エステル(乳化剤=界面活性剤)を入れると、水と油が混ざり合う。牛乳由来のカゼインナトリウムも、乳化剤として加える。増粘多糖類をとろみをつけるために加える。香りを付けるために香料を加える。色を付けるためにカラメル色素。そして高速でかき混ぜる。

 

【清涼飲料水】

デンプンを酵素で加水分解して「ブドウ糖果糖液糖」 を作り甘みを出す。砂糖より安い。酸味はクエン酸やリンゴ酸、或いは合成ビタミンCのアスコルビン酸を加える。これで甘酸っぱい「味」ができた。そこに、オレンジ風の着色料(=色)と香料(=匂い)を加えれば果汁0%のオレンジジュースに、

レモン風の着色料と香料で、以下同様。 

 

【プリン肉】

堅い屑肉に、白く色づけしたゲル状のもの(ゼリー、寒天など)を注射で打ち込む。ラップで包んで機械で揉むと、注射した成分が筋組織の隙間にしみ込み、「霜降り肉」のようになり、柔らかい肉になる。業界の人間はプリン肉と言う。

Folksなどのサイコロステーキも、同様。

 

【ハム・ソーセージ】

  • 安全性に対する危惧がよく出る。NaNO2。ハムやソーセージなどの赤みを出すのに使われる。
  • 自然の生肉は酸素とミオグロビンが結合しており鮮やかな赤色だが、加熱すると酸素がミオグロビンから離れて茶色になる。
  • また、精肉から時間が経つと酸素がミオグロビンから離れて茶色くなる。冷蔵庫に入れっぱなしにして古くなった肉が茶色くなるのは、この原理。
  • 参考:ミオグロビンは赤血球中に含まれるヘモグロビンの仲間で、酸素と結合する能力がある。ヘモグロビンは血液を通した酸素の運搬、ミオグロビンは筋における酸素の貯蔵、と考えればよい。ミオ=筋、ヘモ=血、グロビン=球状タンパク質、の意。
  • で、ハムやソーセージを作る過程では、自然にミオグロビンから酸素が離れて茶色くなるのだが、それだと陰気な色で売れにくいので、ミオグロビンに亜硝酸イオンNO2-を結合させて、ビビッドな赤色を演出している(=発色料)。加熱しても茶色くならないのは、亜硝酸がミオグロビンに強く結合しているから。
  • 同時に、コンビニのサンドウィッチのハムなどには、アスコルビン酸などが加えられるが、これは、強い照明によって亜硝酸イオンが酸化によって硝酸イオンになって色がさめるのだが、これを防ぐため。アスコルビン酸は抗酸化作用を持つ。
  • また、ハム・ソーセージに天然色素のコチニール色素によって直接着色することもある。コチニール色素は、サボテンに寄生するカイガラムシと言う小さな虫が作り出す色素。

 

【人工イクラ】 

アルギン酸ナトリウム+カルシウム+赤色102号+黄色5号=イクラの皮の擬態。中には魚の風味を付けた水と、卵の中の赤いポッチを表現する為に、油とそれに色素入れてる。いくらでも作れてしまう(...笑)。 

 

【合成醤油】

容器を振って、容器の側面からすぐに液体がきれいに落ちるのが天然しょうゆ、べったりまとわりつくのが合成。

合成醤油=加工大豆+だし+アミノ酸液+カラメル色素+増粘多糖類+甘草(ステビア)。198円。

天然しょうゆ=丸大豆+小麦+塩。1000円。

 

【エキス】

本来はextract(抽出)だから、煮出して作るのだが、面倒なので酵素で加水分解して得た成分もエキスと表示している。

 

【海水塩】

精製塩(99%NaCl)にMgやCaが入ると、味や保存効果が上がり、血圧を上げない効果が出る。そこで、にがり成分を加えた塩が出てきた。

自然塩、天然塩=メキシコなどからの輸入岩塩を「伯太」等の海水で解かし、塩化マグネシウム塩化カルシウムを入れて作ってる。公正取引委員会から指導が入った。

自然海塩=海水だけから作った。

原料、濃縮法、結晶法の3つを表示するようになる。

 

【トロ】

① 赤身の魚の肉に、魚油を加えて揉んで、”トロ”にする。

② マグロは常に泳いで酸素を取り入れているが、養殖で、生け簀に酸素を送り込んで、障害物を作って、ゆっくり泳がせる。高カロリーのえさを与えると全身トロのマグロができる。

 

 

************

【単純毒性】

単純毒性が高くて、役所のポジティブリストに上がってて基準値が厳しいのは、

合成着色料(タール系色素、赤何号)、発色剤(亜硝酸ナトリウム:国の基準が一番厳しい)、合成甘味料(サッカリンアスパルテーム)、防かび剤(OPP、TPZ:柑橘類に塗布、洗えばとれる)、合成保存料(ソルビン酸、安息香酸)、など。

 

【キャリーオーバー】

サラダにドレッシングがついていて、ドレッシングの原材料が「しょうゆ、植物性油脂、pH調整剤・・・」となっていたとして、しょうゆにどれだけ添加物が使われていても、表示しなくてもいい。これがキャリーオーバー。

 

【添加物表示】

 全部書くと、ラベルが大きくなりすぎるが、ある程度は書いてあるので、嫌なら避けることはできる。ここまで書かせることが出来ているのは、消費者運動の勝利。

食品として売るときには表示しないといけないが、加工すると表示しなくていい。ファミレスやほか弁で、奥で袋あけてても、表示しない(聞けばいいから)。

 

 【無添加】

コンビニで280円で売っているサンドイッチを、無添加で作ると、800円くらいかかる。誰が買うのか。無添加食品に挑戦しているが、どれほど多くの人間が挫折していることか。せっかく無農薬野菜を買っている消費者が、スーパーで買った添加物入りのドレッシング掛けてる。

 

【消費者の舌】

濃い味に慣れている。美味しいと思させる黄金の三角形・・・。

① 塩(焼き塩)・・・岩塩を輸入して、焼いて再結晶している。海塩ではない。

② 旨み(グルタミン酸ナトリウム)・・・味の素。自然界にあるのはグルタミン酸。

③ タンパク加水分解物(大豆を塩酸で加水分解)・・・匂い。塩素化合物が副生成して問題。

薄味だと、物足りなく感じてしまう。子どもの頃から舌の感覚が育つ。

 

【給食】

学校給食には基準があって、添加物は殆ど入ってない。

 

【時間】

忙しいと、つい、だしの素使っちゃう。恩恵が大きいのか、不透明なリスクが大きいのか。避けるには、手作りするしかない。台所と食卓のコミュニケーション。個別の添加物に神経質になるより、考え方を変える。

 

 

【粗食の勧め】

和食の粗食でちょっとお腹が空くぐらいが一番健康にいい。

 

【不透明なリスク】

jizaki:宇沢弘文は『自動車の社会的費用』で、交通事故や排気ガスによる経済的なマイナス効果を計算して見せたが、同様に、もし添加物が原因でで明らかな健康被害が出れば、「添加物の社会的費用」を計算して、添加物を利用し続けることが私たちの社会にとって望ましいのか、と問いかけることはできると思う。

でも、明らかに毒性の高い添加物は使用禁止にされるから、基準値以下の添加物の影響は、消費者に与える心理としては「食品による低線量内部被爆リスク」への不安と似たところがあると思う。科学的に明確なデータはないし、もし何らかの病気になっても因果関係を証明するのは至難の業。

不安を煽って健康食品の販売促進する手法もあるかもしれないけど、それは気分が暗くなるので、それよりは、資本制の大量生産・大量消費・大量廃棄から軟着陸するためのライフスタイルの転換の提案という方向に行くんだろうな。