読書メモ『野菜が壊れる』新留
『野菜が壊れる』新留勝行/集英社新書/2008年/700+税円
【本書の問題点】
- 羅列的で、証拠が示されない記述が多いため、知識として使いにくい。
【慣行農業】
- 化学肥料と農薬の多用によって、見栄えばかり良くて栄養価の低い野菜が増えている。
- 戦後の日本で、「硫酸アンモニウム」が製鉄の副産物として生じるようになった。これを「化学肥料」として農家に買わせることで、製鉄所は廃棄処理にかかるコストを軽減できたし、農業から工業に資本移転することもできた(50年代に肥料二法を制定し、国策として推進した)。
- 「硫酸アンモニウム」を田畑に撒くと、硫酸分が残って土壌が酸性化する。酸性土壌を中和するため、石灰分の投入が必要となり、戦後農業は化学肥料への依存を高めた。
- 動物も、化学肥料と農薬の多用で育てた穀物と抗生物質や成長ホルモンを与えて育てるので、不健康な状態になっている。
【有機農業】
- 化学肥料と農薬を減らして、土壌の状態を良くすれば、収量はやや下がるが良質な野菜が作れる。
- 有機JAS認証制度の問題点。農薬30種の使用が認められている。認証手続きの時間的・経済的負担(数十万円)が、農家にとっては大きい。認証団体が農水省や農協の幹部の天下り先になっている。認証団体には国から資金を入れ、有機に転換する農家を支援するべき。
エビデンスを伴わない記述が多く、インパクトの無い本になっている。編集側は、本づくりのクオリティーを守って欲しい。おしまい。