jizakiの備忘録

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VideoNews「データで見る日本経済の本当の病状」藻谷×小幡×神保

【概要】
 『デフレの正体』の著者、藻谷浩介に聞く。近年の日本経済の減少を「人口の波」という観点から解説。経済学者から見れば当たり前のことしか書いてないのに、この本を読んで衝撃を受けている人が多いことが衝撃。テレビの経済コメンテーターの方が、学問的には異端。
  
【動画】2010年10月23日配信
VideoNewsマル激トーク・オン・ディマンド 第497回「データで見る日本経済の本当の病状」

ゲスト:藻谷浩介氏(日本政策投資銀行参事役)
聞き手:神保、小幡績(慶応大学・経済学・ぶっちゃけ言い過ぎ、が面白い)
 
【藻谷浩介】
日本政策投資銀行」は、地域振興をしている銀行。地方でドサ周り巡業して地域の経済のコンサルタントするのが仕事。観念ではなくデータで語る。議論をマクロから始めるのではなく、ミクロ経済の工場とか事業所の方向性をどうするか、に注目。
 
【経済論壇の誤謬】
KY:空気しか読まない、SY:数字読まない、GM:現場見ない
実際の経済は、テレビの作っている空気と違う。
 
【利益or売上】
真の投資家は、メディアを見ずに自分でデータを探して見る。会社の収益表を見るとき、操作できる「利益(対前年度差)」は見ない。「売り上げ(gross)」を見る。 
まして「雇用」は、「利益」ではなく「売り上げ」に対して生じるもの。
ここまで経済が成長すると対前年同期比だけでどうか(微分係数)、とか問題じゃない。数十年の変動における絶対水準を見るべし。
  
日本経済に対する誤診①
【中国脅威論】
軍事は別にして、経済的には脅威でない。
数値的には、中国に対して「物・投資・特許」が売れている(黒字)。韓国に対しても、レクサスが売れたのもあって黒字。
日本はご近所の派遣労働者じゃない。日本はご近所の宝石屋だ。ご近所が金持ちになって初めて宝石が売れる。ドイツのBMWやBentzに対してLexus等は善戦しているが、イタリアのFerrariに拮抗できるのか?
 
【相互依存】
宝石屋が、「ご近所が金持ちになる」のを妬んでどうする。ご近所と騒動が起きないように、裏で手を回して未然に防ぐのがメリット。
日本の加工貿易は、完成品ではなく部品(デバイス)が主なので、中国や韓国の発展がないと国内の雇用も伸びない。まさに相互依存。日本のデニム生地が世界一だ、ということが知れて、今ではイタリアのジーンズの生地は日本製。これもデバイス輸出。
 
【日本にとっての宝石屋】
日本が赤字になっているのは大国ではフランスのグッチとイタリアのブルガリ。小国でオーストリアのスワロフスキー。スイスの観光とノルウェーの水産。いずれもブランドまたは日本にないもの。ドイツやイギリスに対しては黒字。
 
誤診②【戦後最長の好景気】
確かに数値上は好景気だが。
好景気の意味が変わっている。多数の人にとって、実感はない。
 
【消費低迷】
高齢富裕層(株主)が、儲けを貯蓄or投資している。消費性向が小さい。老後(5年後)が不安だから。子どものために残すのではない。信じられるお金は、何にでも変えられる権力だから。
消費低迷は、将来不安があるから。不安なら貯蓄できるほど、耐久消費財は行き渡っている。 
 
誤診③【地域間格差
実体がない。自分のところが悪いと思っている。東京の一人勝ちと思われているが、通販の売上。百貨店やブランド店が店じまいしている。
お店の床効率が、東京と地方で3倍しか違わない。地価は10倍も違うのに。
だから東京で商売するのは難しいので、入れ替わりが激しい。
 
【リーマンショック】
リーマンショックで世界中の金融市場が崩壊したのは、「レバレッジ」が効きすぎていたから。自己資本が少ししかないのに借金してお金を増やして、全額投資していた。少しでも値下がりすると崩壊。
日本の中では金融バブルが生じていなかったのに、リーマンショックの影響を受けたのは、宝石屋さんだから。不況時には高付加価値商品は買い控える。
  
【デフレの正体=人口の波】
世代別人口をヒストグラムにして、戦後から2040まで人口の波を見ると、団塊と団塊ジュニアの二つの波が日本経済を通り過ぎている。
2000以降貿易黒字になっているが、これは団塊世代の退職によって高い賃金払わなくて済むようになったから。労働を機械に置き換えて、売り上げに回せる。若い世代は人数少ないし賃金安いので消費が増えない。
 
【今後の日本経済】 
円高デフレが、日本が生き残る唯一の道。輸出競争力を維持するには、円高でないと原材料輸入できない。賃金低くないと輸出競争力落ちる。円高デフレでなかったら、失業率もっと上がってる。 
2040年に団塊の世代が片付けば、出生率も回復して、ストック(不労所得)で食ってる人へって、フロー(労働所得)で食うひと増える。地価は下がって、生産性を高く維持できれば、コンパクトに回っていく。 
 
【人生80年】
人生が長くなって、中高年の幼児化が進んでいる。趣味や服装。長い人生への適応か。
仕事を二つ以上した方がいい。30年仕事をするのはいいけど、60年はやりすぎ。ピークアウトした後が大変。
 
【所得移転としてのオレオレ】
生産人口の山と消費人口の山がずれる。オレオレ詐欺やアンチエイジングは、高齢者から若者への所得移転。恋愛マーケットは70歳、80歳まで可能性がある。
  
 【ピンボケの処方箋】7章・8章を読め
① 生産性向上・・・「~性」や「~率」の議論は、分母を同じものと考えるから間違う。生産性=付加価値額/労働者数。人減らし(分母小)をすると、給料減るので消費減る(分子小)。率は上がっても絶対値が小さくなる。
分母(労働者)を減らすのではなく、分子(売上)を大きくすべき。売り上げを伸ばすには、人口減で数量は伸びないので、高い単価で売れるマーケティングをする。
② 経済成長を達成・・・利益が消費しない年寄り株主に行くので、意味ない。
③ 景気対策として公共事業・・・税収の二倍、公共事業をしているので、これ以上は無理だろう。金融緩和と同じで、もうすでに十分な量をやっている。最も効率の低い組織に金を使わせるなんて!
④ 構造改革・規制緩和の「フリ」・・・ほとんどの会社は、リストラと称しながら、中高年の雇用を守って若年層の給料を下げた。年功序列やめて転職市場を活性化する。規制緩和は能力のある挑戦者に場所を開けるためではなく、既得権をもつ大企業を守るための制度改正になっている。
⑤ マクロ政策でのインフレ誘導・デフレ脱却・・・デマンドサイドからインフレが起こるならいいが、サプライサイドからのインフレ誘導は、実経済に影響ない。凧紐理論・・・凧が上がっていくときに日銀が紐を引いて抑えることはできるが、無風で落ちてくるときに日銀が紐を押しても凧は上がらない。
⑥ ものづくり技術の革新
⑦ 出生率を上げる・・・親の数×出生率なので、少々上がっても焼け石に水。出生率4に戻っても、ムリ。ダメとわかっててもやる、くらいの気持ちで。
⑧ 外国人労働者の受け入れ・・・団塊の世代1000万人が労働人口から抜ける。これだけ補充するのは無理。受け皿がない。移民で成功したのは、人口の少ないオーストラリア5000万人。永住権与えない限り、出稼ぎの人は送金するから。
 
【マクロ経済】
問題はマクロ経済ではなくミクロ経済。政府ではなく企業の問題。金もってる老人に売れる商品を作って売れ。恋愛マーケティングとか。
世界的にも、スティグリッツクルーグマンなど、ノーベル賞経済学者が「マクロ経済学は死んだ」と言っている。 
 
【処方箋】生産年齢人口が減ることへの。高齢人口が増えることには対処にならない。
① 高齢富裕層から若者へ所得移転・・・高齢者の増加が社会の負担となっているが、これは経済成長で補えるものではないし、補うべきでもない。高度成長以上の成長をしなければいけない。
② 女性の就労促進と経営参加・・・労働生産人口で未就労女性が1600万人。消費の7~8割は女性が行っている。なのに商品はおじさんが作るから外す。女が働くと子供が減る、というのはSY。働いた方が収入多くなって、子ども増えている。3人産んで専業主婦というのは、よっぽど夫に収入がある。
③ 外国人観光客・短期定住客の受け入れ・・・人口減少社会で移民労働者を受け入れろという議論があるが、生産者よりも消費者を入れたほうがいいので、観光客を入れるべき。
 
おしまい