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VideoNews「ミツバチが知っていて人間が知らないこと」中村×宮台×神保

【概要】

 前半は、ミツバチの巣が全滅するCCDと、日本での利用について。米の食味に変化がないのに農薬を使って、ミツバチが害を受けている。

後半は、ミツバチの驚くべき生態と行動。

 

【動画】2009年07月11日

VideoNews マル激トーク・オン・ディマンド 第431回

「ミツバチが知っていて人間が知らないこと」

ゲスト:中村純氏(玉川大学ミツバチ科学研究センター主任教授・セイヨウミツバチを研究)聞き手:宮台、神保
 
玉川大学】 
東京都町田市に研究センターがある。
 
【CCD】 
2007年にアメリカでCCD(colony collapse disorder蜂群崩壊症候群ほうぐんほうかいしょうこうぐん)が問題に。毎年、越冬できない巣箱は15-25%はあるが、2007年は大した寒さでもなかったのに、それ以上の率で崩壊している。
最新の論文では「栄養と衛生」が一番効く、と。色々対策して、エサをあげて清潔にしたらたら回復した。で、「議会予算」付けちゃったのに、「栄養と衛生」を改善しただけで、豊作になっている。予算どうしろと、問題に。
 
【CCDの原因】
① ヘギイタダニ説・・・害虫防除。衛生管理。
② ストレス説・・・被害の出た巣箱の多くが、長距離移動させられている。移動先では、何十キロも単一作物。
③ 栄養不足説・・・単一作物で栄養が偏る。
④ 農薬説・・・アメリカのCCDでは、ネオニコチノイドとCCDとの因果関係がない。農薬散布時にハチを避難させれば、被害受けない。あるいは、周りに多様な花が咲いていれば、被害ない。
⑤ ウイルス説・・・唱えた学者が固執している。
⑥ 気候説(猛暑、暖冬)
 
【日本のミツバチ利用】
養蜂家には、ハチミツを取る養蜂家と、作物に受粉させる養蜂家といる。
ハウスでハチを使うようになったのは70年代から。最近急拡大した。
ハチは農業資材。女王蜂が海外から輸入されているが、輸入相手国で病気が発生すると、輸入できなくなる。
日本でも2008-2009年に受粉用が供給不足。ハウス栽培のナス、イチゴ、メロン、スイカ、果樹のリンゴ、ナシ、サクランボで受粉低下。
ハワイやオーストラリアで病気が発生し、輸入できなくなった。女王蜂の買い占め騒ぎ、中小の卸に行き渡らなかった。
 
【稲とハチ】
最近、養蜂家がJAを訴えた。農薬散布でハチがダメになった、と。
ハチは稲にも行き、田んぼの農薬にやられる。
8月、稲の花が咲くころ農薬散布する。夏は他に咲く花がないので、稲にハチが行く。稲は風媒花で、蜜はないが花粉をたくさん出す。花粉と一緒に農薬を巣に持ち帰る。
 
 
ネオニコチノイド系(成分名で、農薬名は多様)・・・人のために造られた農薬。人体に害の低い、しかし昆虫に効く成分。有機リン剤は、人体にも害大きい。脊椎動物と昆虫で、違う神経伝達物質を使っている部分があって、そこをターゲットに。
92年開発。
02年、稲につく「斑点米カメムシ」の防除で使われ出す。
薬剤のついた花粉を持ち帰って、巣内の若いハチが食べて死ぬ。すると、人口ピラミッドが崩れて、巣が機能しなくなる。この点が、ハチに影響が大きいと言われる。
ネオニコチノイドは水溶性で、葉面散布で、葉から吸収され花粉にも回る。人体に影響がない、ということで、濃く撒くことができる。
効かない昆虫もいて、それは代謝(分解)能力がある。使用するうちに、代謝能を獲得するかもしれない。
フランスでは、環境に与える影響が大きいとして、使用禁止になっている。環境で走りすぎの感じはあるが、欧州はそういう方向。
 
【コメの等級問題】
カメムシがつくと、米粒に小さい黒い斑点がつく。1000粒に1粒以下で1等、1000粒に2粒以上で2等(米60kgが600円安くなる)、7粒以上で3等(2等より1600円安くなる)。等級外は1000粒に50粒以上。食味は変わらない。寿司一貫で500粒。
農協は、1等級を作れ、そのために農薬使え、と指導。
黒いコメを判定できる機械だけでなく、黒いコメをはじく機械もある。
農薬買わなくていいので、安く作れる。
集落の中で、そこだけ撒かないと、カメムシがその田んぼに集中して、周りの田の等級が下がる。
普通にスーパーでコメを買うだけで、ミツバチを殺している。
 
【養蜂】
養蜂家が、飼育法を変えてこなかったのではないか。作物の栽培技術はどんどん変わっているのに。アメリカでは、栄養と衛生で改善した。その程度のことをしろよ。
稲へのネオニコチノイドの使用が始まった時点で、養蜂業への配慮・手当が必要であったろう。
 
<ミツバチの行動>
【食料採集】
蜜=炭水化物=主食
花粉=タンパク質=おかず
 
【幼虫のための採餌】
巣に幼虫がいると、花に行く。女王蜂が子を産むと、幼虫がどんどん増えるので、長い期間花に行く。イチゴは4か月使うので、女王蜂を使う。メロンは2週間なので、働き蜂よ幼虫だけ。
ハウスで使うセイヨウミツバチは、野生化するほど集団のサイズが小さい。 
 
【巣温管理】
巣温が高いと巣の入り口で羽を動かし、「扇風機係」になる。日本ミツバチは巣内に風を送り込み、セイヨウミツバチは巣外に風を出す。もっと熱くなると、水を吸ってきて巣内に打ち水する。
 
【門番】
入り口には「門番」もいて、他の巣から蜜を泥棒に来るミツバチを見張っている。スズメバチも警戒。
 
【役割分担】
ミツバチの世界には、メスにカーストがある。女王バチも働きバチ、幼虫3ヵ目に「生殖カースト」が分化する。
働きバチでは、「時間カースト」がある。
生まれてすぐは、筋肉も脳も発達していないので、「掃除係」。
1週間すると、ミルク係で女王や幼虫にあげる「乳母」。
お腹でろうwaxをつくり、巣を作る「大工」。
次に、「貯蔵係」。ミルクを作っていた腺で、酵素を加えて蜂蜜を巣穴に詰める。熟成が進めば、巣の上の方へ詰め替える。蜂の巣は上からぶら下がっているので、上に重いものを。その日、どれくらい濃い蜜を集めれば「外勤」が許してもらえるかを、この「貯蔵係」が決めている。薄いと、受け取ってもらえない。受け取ってもらったハチは、よくダンスする。薄くて受け取ってもらわなかったハチは、ダンスで学ぶ。
とってきた花粉に混ざった樹脂を、仲間に取ってもらって、巣の隙間に詰める。これがプロポリスになる。強い抗菌活性がある。
約3週間で内勤が終わる。
次に、門番になる。
最後は、花に行く。外勤は約1週間。一日に20回出れば多い。蜜に行くか花粉に行くかは、本人が決める。巣でもらえる栄養で、判断している模様。タンパク質分が少ないと、花粉に行く量が増える。
8の字ダンスで、尻を振るときに、音を出す。音と言っても巣材の振動で感知して、踊っているハチに近づく。そして、踊っているハチの後ろをついて歩く。音1秒で800mの距離を表す。首の部分に、重力に対する傾きを検知する毛が生えていて、太陽に対する方向を認知する。
8の字ダンスで知ったハチが、実際にその方向と位置に飛んでいる、ということが、2003年にレーダーを使った実験で実証された。
女王蜂は一日1000個生む。
 
【分封】 
巣別れの時は、女王が巣の半分のハチを連れて出る。ハチ玉を作っているときに、斥候バチが探索し、戻って8の字ダンスする。ダンスで知ったハチが実際に行き、いいと思ったら自分も8の字ダンスするが、思わなかったらしない。繰り返すうちに、8の字ダンスが1種類に収れんする。
 
【新女王】 
女王蜂の腹から分泌される女王物質(フェロモン)を、働きバチが舐めて、仲間にも回す。すると働きバチの卵巣が抑制される。
働きバチは6角形の巣に産み付けられる。女王バチは釣鐘型の「王台」に産み付けられる。王台は複数あり、先に出てきた女王蜂が他の王台を壊し、殺す。たまたま同日に出てきた女王がいたり、王台を探して壊すことが出来なかった場合は、女王蜂同士が決闘して刺し殺す。女王蜂の針は何度も刺すことができ、昆虫に効く毒。女王蜂は人を刺さない。(働きバチは針に戻しがついていて、毒は哺乳類に効く。)
女王蜂がアクシデントで死んだら、若い幼虫の巣の形を、六角形から王台に作り変える。
 
【ミツバチの家畜化】
セイヨウミツバチは、エジプトで飼いはじめられた。飼いつづけるうちに、人に慣れた「家畜種」が生じた。あまり刺さない、蜜をたくさん出す、巣を捨てて家出しない。ごく一部の血筋が、世界中に広まっている。アフリカに残っている在来のセイヨウミツバチは、とんでもなく気性が荒い。外見はあまり変わらない。トウヨウミツバチは、飼うのが難しいと言われていたが、アジアで技術が確立している。ニホンミツバチは蜜の量が少ない。少しの蜜でも冬を越すから(足るを知る)。
ニホンミツバチは、巣に対する執着が低い。外憂内患ですぐに出ていく。セイヨウミツバチは巣を捨てない代わりに、病気が発生しやすい。セイヨウミツバチは、寒いので日本では冬を越せない。ただ、温暖化で冬を越しているものもいる。
 
アジアに養蜂振興で行って「この村で何が必要ですか?」と聞くと、「俺の家には水道がない」とか色々出てくる。各自の要求は置いておいて、養蜂振興できているので、「ミツバチを飼うには何が必要ですか?」と聞くと、「森の花が必要だ」、「森の木で巣箱を作ろう」、「森は水源だ」、結局、「森を大事にしよう」と、人間だけで話していたのとは違う意見が出てくる。これが、人間から見るのではなく、ミツバチから見ることの効用。
 
【刺す時】
ミツバチはまず刺さない。まず体当たりして、それでも巣を守れないとなると、死と引き換えに刺す。働きバチが針を刺すと、針と毒袋が体から離れるが、そこに含まれる神経球がそれまでの抑制が取れて、針の根元の筋肉を動かす。すると2本ある針がずれて動いて、より深くに刺さっていく。針の取れ方にもよるが、2日は生きる。巣には帰っても追い返されるので、刺した動物を追いかけて、警報フェロモンを巻き続ける。
ミツバチの巣の近くで、急な動きをしなければ刺されない。