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VideoNews「見えたり、金融資本主義の正体」小幡×宮台×神保

【概要】

少し古い動画だが、私は「アベノミクス」が結局は「飽和した市場」における「不可避なバブル」をもたらすと考えているので、参考までに見た。

それと、安倍首相は「TPP」参加するとか言ってるけど、アホじゃねえの? そんな政策で日本経済が成長する「フロンティア」が作れるとは思えない。

 

【動画】2008年12月20日配信

マル激トーク・オン・ディマンド 第403回 「見えたり、金融資本主義の正体」

ゲスト:小幡績氏(慶應義塾大学大学院准教授)聞き手:宮台、神保
 
小幡績
サブプライムローンが爆発したリーマンショックに始まる金融危機の本質を解りやすく解説した本。バブルは資本主義の帰結で、不可避。宮台曰く「これほど深く、バブルの必然性を説得されたことはなかった」。
 
サブプライムローンは、良くできている。誰も損をしないし、崩れない。じゃあ、誰もが参加したくなる。参加すると降りられなくなる。
信用の低い人(給料を毎月もらえているか分からない人)に、住宅ローン貸します、という画期的な仕組み。初めの1・2年はほぼ無利子。3年目から金利15%で、これは闇金並み。これを気にせず、貸す側も借りる側も契約した。
バブルとして面白い要素が色々詰まってる。 
 
【バブル】
今まで家を持っていなかった移民や貧民が参入するので、また、別荘を買う人が多いので、市場が拡大する。
2年に1回借り換えて、新しい家に住むことを繰り返す。そんな人にローンを出し続ければ、このバブルは膨らみ続ける。
少しでも止まると、逆回転し始める。バブル崩壊。
 
証券化
① リスクの小口化・・・貸し倒れのリスクを1万人で平均化する。一人で見れば返すか返さないかだが、数を集めると確率的に、全員が貸倒れることはない。
 
② リスクの除去・・・同時には倒れない、というのを保障するテクニック。リスクがどこにあるか分からないことが問題ではなくて、同時には起こらないことがメリット。
 
③ リスクの純化・・・リスクが固有名詞から匿名化する。特定の借り手のリスクではなく。リスクが平均と分散の「抽象的な人格」の借り手が立ち現れる。
 
ここまでは、リスクを減らすこと。ここからは、「付加価値」を上げること。
 
債権として返ってくる確率が高いものと低いものとで、別の証券にする。すると、「ギャンブル好き」の奴は、ハイリスクハイリターンの証券を求め、「安全志向」の奴はローリスクローリターンの証券を求める。そうすることで、証券が売れる。
 
【格付け】
固有名的な証券を、標準化することにより、匿名的な商品化する。
 
投資家にとっては、固有名は興味ない。興味あるのは、リスク(返ってこない危険性)、リターン(返ってきた時の額)、格付け(知名度、ブランド)、の三要素。
この3軸の組み合わせで、投資家に売る。これが、証券化。格付け(ブランド)が高いと、自分が買いたくなると同時に、売り逃げ出来る。流動性リスクが小さい。
 
現代の複雑化した金融市場において、金融会社が、客や上司へのへの説明責任を果たすために、「格付け」は使える参照点。
 
【投資家の作るバブル】 
プロの投資家=行動様式が中心化する。その株の会社なり住宅ローンの借り手の「社会的な活動」に投資しているのではなく、単に利ザヤで儲けるために売り買いしているのだから、買いはじめたらみんな買うし、売り始めたらみんな売る。だから、バブルが起こりやすく、弾けやすくなる。
 
バブル崩壊は個人の予想や感覚と、ケインズの言う「美人投票」で始まりうるので、いつ弾けてもおかしくない。
 
安定した上昇傾向を持つ金融商品は、途中でバブルに変質する。バブルの様相を呈し始めると、投資家が入れ替わる。大手の老舗は退場し、新規のファンドがギャンブルする。バブルは最後ほど盛り上がり、華がある。根性の無い奴は先に降りる。最後ほどおいしい。まさにチキンレース。 
 
バブルは、訳も分からない素人が踊らされているのではなく、訳が分かってるプロが、人から金借りて腹据えてやってる。
 
【最後に素人】
バブルの最後には、「低金利」が当たり前の社会にあって、公的資金の運用の金が入る。運用する側は、上がると分かってる投資しなければ、無能と言われるから。素人が損するのは、「低金利」であることが大きい。そしてバブルが始めると社会的影響が大きい。実体経済にも影響する。
 
【可視化=不可視化】
サブプライムを混ぜた証券は、リスク分散して、数値的にも可視化されているが、そこに混ぜ込まれているものには、1億円の家に住みながら毎月2万円しか返していないような債権もある。それを、統計的に平均化して見えるようにしたのが「可視化」と言われても、それは「不可視化」ではないのか。
 
情報を圧縮することでビジビリティー高めることが、情報化社会の流れだが、それで本当に見えているのか。今やGoogleないと生きていけないが、検索で出てくる情報がある一方で、出てこない情報もある。検索上位数件を見て、分かったつもりになると、あぶない。
情報化ゆえに、情報が消えていく。
 
【金融倫理?】
サブプライムローンに関わった人間に、何か過失があるとすれば、不誠実で無責任だった。証券化して投資する人間と運用する人間(証券会社のサラリーマン)が分かれると、チェックが甘くなる。実体経済からの遊離に鈍感になる。
 
【実体経済と金融経済】
80年代までは、両者の解離は少なかった(実10:金12)が、それ以降、大きくかい離する。2007年には3倍近く(実55:金196)。数値は兆ドルで名目GDP
 
80年代は、先進国の実体経済の成長が止まった年。それから金融経済化が始まった。
 
【資本主義】
資本主義は、要はネズミ講だ。先食いする。資本を投下して、増やして回収して儲ける。株を買う、というのは、その会社の将来を買う、ということ。将来成長することを見越して、今儲けようとすること。
 
【フロンティア】
資本主義は有望なフロンティアがないと成長が続かない。
物理的なフロンティア。植民地、アメリカ西部開拓、今でいえばアフリカ。先に買った人は、後から来た人に売って、儲ける。後から来た人は、更に後から来た人に売って、儲ける。この繰り返しがネズミ講。市場が成熟すると、次のフロンティアを探す。
 
90年代はじめは、社会主義国の資本主義化。企業で言えば民営化。ここで投資銀行は儲ける。
90年代半ばは、アジアの新興国への投資ブーム。
90年代後半は、ITバブル。
今は「アフリカ」で、資本主義化されていない「自給自足」経済を、どんどん資本主義化していってる。
 
【実体経済の成熟】 
昔は、投資機会は多かったが、資金を持ってるやつが少なかった。だから、重工業に投資した財閥が独占的に儲けた。今は、みんな金持ってるけど、フロンティアが消えて投資機会がない。余った金どうするんだ問題。金融経済の中でバブルを作って回すしかない。資本の自己増殖本能の発露。 
 
【資本主義の行き詰まり?】 
金融バブルは、資本主義の終焉期に見られる最終形態。
自分で使うために買う(使用価値)のではなく、人に売るため(交換価値)に買っている。実体経済に対する態度が、無責任で不誠実になる。
 
金融資本主義が無くなっても、実体経済(日々の営み)が無くなるわけではない。金融資本主義=キャンサー・キャピタリズム。
 
フロンティアの消滅が資本主義の消滅。
 
米国債が低金利でみんな買っている。CDSという倒産保険が上がっている。つまり、米国債バブル。これが潰れたら、世界経済大変で、縮小均衡でブロック化して自給自足する。
 
しかし、喉元過ぎれば何とやらで、中国で次のバブルが起こるかもしれない。
 
お金には、「有限の使用価値の限定」から「無限の交換価値の可能性」への飛躍があって、そこに人は魅了されて、お金を増やそうとするので、資本主義の次に何が来るのか、見えない。
しかし、個人や共同体の今の生活で言えば、使用価値や信頼関係を重視し直すことは、いいと思う。
 
おしまい