jizakiの備忘録

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ジュンク堂トークセッション「「グローバル恐慌」を日本は生き抜くことができるのか?」中野剛志×柴山桂太

動画視聴メモ

 

【視聴動画】

 ニコニコ動画中野剛志×柴山桂太『グローバル恐慌の真相』(集英社新書)刊行記念トーク@ジュンク堂書店池袋本店」(2012.6.21.配信)

 http://www.nicovideo.jp/watch/1340264166

 

【本】

『グローバル恐慌の真相』/ 中野剛志×柴山桂太/集英社新書/2011

アマゾンの紹介文:

リーマン・ショックで金融資本を救った国家が次々、危機に瀕するという恐ろしい連鎖が始まった。グローバル化のデフレ圧力で中間層が破壊され、未来への投資が停止し、民衆とエリートの対立が深まる「冬の時代」。この長く続くであろう危機、大恐慌の足音の聞こえる時代を日本が生きぬくために必要なのは、過剰な流動性を生んだグローバル化の危うさと各国の社会構造の本質まで分析する「経済思想」だ。
『TPP亡国論』で論壇の寵児となった中野剛志と気鋭の経済思想家・柴山桂太が徹底的に危機の時代への処方箋を語りつくす!

  

【人文系の若手学者】

40代前半。若手と言えばITやサブカルについて語るのが主流のようだが、この二人は古典が好き。

 

【危機の時代】 

処方箋を求めている人は、自分が安心したいだけ。本人にとって不愉快な処方箋は受け入れない。これが困ったこと。 

危機の時代には、世の中の不確実性が高まる。将来が見えなくなる。だから不安になって、耳触りのいい考え方に飛びつく。 

 

【規制とイノベーション】

日本の60年代、韓国の80年代に、イノベーティブな企業が出てきて、成功した。当時、非常に強い規制があったにもかかわらず。

アメリカで80年代に「規制緩和によってイノベーションが起こった」とみんな思っているが、あれはバブルでお金が余っていて、そのお金がリスクの高いベンチャーに流れたから。それに、軍事産業の民営化で、政府の蓄積してきた技術の移転でスピンオフが生じたから。

 

【今の経済学】

アメリカ流の経済学が輸入されているが、大手新聞や経済学の教科書に書いてあることは、変なことが多い。そういう時に古典を読むと、別の見方が開かれる。

社会科学系では、現代の教科書よりも、古典を読んだ方が腑に落ちる。

 

【大阪市長】

ツイッターで人をけなすなど、まず品性が愚劣。維新と言ってる政策も、古い。三流経済学者の言ってることと同じ。ケインズ「どんな者も、過去の経済学者の奴隷である」。

 

【民主主義の危険性】

ヒットラーも軽薄で何も考えていない奴で、老練な政治家は「閉塞した空気の中で、元気があるから利用してやれ」と思っていた。しかし、あれよあれよと政権を取ってしまった。

トクヴィル ”民主主義と独裁は専制という意味では同じである。多数派が全てを決める専制だ(多数者の専制=全体主義)。「沈黙の螺旋」とは、少数者の意見を無視することで、少数者が意見表明をしなくなる連鎖が生じること。支配者と被支配者の間に中間団体が必要だ。”

アメリカの民主主義が曲がりなりにも機能しているのは、教会や地域共同体が強いから。

 

55年体制

自民党の利権政治は、中間団体たる「利権団体」同士が構想して調整しているから、トクヴィル風に見れば、良い民主主義である。

55年体制」は90年代に機能しなくなったけど、それを担っていた中間団体をぶっ壊すのは、ファシズムに至るのでよくない。

 

【政治責任】

議会を無視して首長のトップダウンで政策を決めて、大きな失敗したときに責任の取りようがない。

議会を通した議論に時間がかかるのは仕方なくて、政治的決定に納得するためには重要な手続き。

アメリカや日本の二院制では、上院や参議院がエリートの位置づけで、トクヴィル的には支配者と被支配者の間の中間団体(フィルター)になっている(アメリカの上院の場合は)。

 

【法経】

エドマンド・バーク「法律家や経済学者が革命や改革をしようとすると、ダメだ。」

法律は、個人に権利を与えるものだし、経済学は、個人を単位としているから。中間団体の重要性が分かっていない。日本の官僚は経済や法律出身で、トクヴィルの発想がない。

 

【これからの経済】

金融化(ストック化)がさらに進む。今の日本では、GDP(フロー:500兆円)の3倍の資産(ストック:1500兆円)がある。資産運用に回って、国内外でバブルを生む。お金が暴れまわって危ない。

 

【バブル】

バブルについて考えている経済学が少ない。市場を自由にすると、個人の合理性によって資源の最適配置がなされる、と考えている経済学が多いが、実際はそうではない。

アダム・スミスは「商業や金融は、農業や工業をしっかり守り育てた後に、おまけでついてくるぐらいがいい」と言っている。金融バブルがなぜいけないか、実体経済が振り回されるからだ。

ミンスキーは、資本主義でバブルが必然的に起こることを理論化している。「健全な経済では、銀行は担保と事業計画をしっかり評価して融資するが、景気が過熱するとレバレッジを効かせた「投機的金融」が増えて、融資が甘くなる。さらにバブルが生じると、短期的に利ざやを稼ぐことが主題になる。資本主義は、このバブル化を制度的に調整する仕組みを入れにくい」と。

 

ケインズ

ケインズ『一般理論』は、12章と最終章がオモシロい。予備知識がなくても読みやすい。「民主主義の世論と、金融市場のバブルは似ている」と。風評で一斉に一方向に動きやすいから。

30年代の大恐慌で、ロンドンの金融街「シティ」では、アメリカの「ウォール街」ほどひどい乱高下はなかった。なぜか。それは、「シティ」が一般大衆はお呼びでないような地区だったからだ。「ウォール街」は、主婦がへそくりで投資することもできる場所だから、乱高下激しかった。

30年代の恐慌で、アメリカ、ヨーロッパ、日本では金融資本への規制が強まった。

ケインズは、45年のブレトン・ウッズ会議にイギリスの全権代表として参加し、戦後の世界経済の体制について話した。「カジノ資本主義はやばい。資本の国際移動を自由にするのは危険。」

 

【資本の国際移動】

70年代から、この約束(ブレトン・ウッズ体制)が破られてきて、「カジノ資本主義」が再び席巻している。二次大戦を経て「覇権国家」たる英米が強力に封じ込めた金融資本の「パンドラの箱」が、今やより多数の国を巻き込んで暴れまわっている。

G20がエゴをむき出しにしている今の状況では、ブレトンウッズの時のように、金融資本の移動を規制するのは難しいだろう。世界の裏で起こったバブル崩壊が、日本経済に押し寄せる。

各国ごとに、資本移動の自由を規制すると、安定化するかもしれない。しかし、アメリカはFTAやTPPを結んで二国間、多国間で投資の自由化を進めようとしている。スティグリッツは頭を抱えている。

 

【コモン・センス】

コモン・センスが喪失した時代。問題の優先順位が分からなくなっているから、議論がかみ合わない。みんな何が問題かわかってない。どう考えても「震災復興」が第一なのに、なぜ今「社会保障を消費税で支える」とか、「道州制」なのか。

財界トップや保守にしても、「年寄らしい年寄り」がいなくなった。人生の蓄積がないのではないのか。

 

【文系】

最先端の学説は、たいてい間違っている。むしろ古典より劣化している。古典を読み直すと楽しい。