jizakiの備忘録

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ジュンク堂トークセッション「いま新たな「食と農業」の危機が迫る!」(『黙示』真山仁)

【著作・作家】

小説『黙示』/真山仁(新聞記者出身の作家)/新潮社

・・・食と農業についての小説。個性が強烈なキャラクターが登場する社会派の小説家として知られる(NHKでドラマ化された『ハゲタカ』など)。地方記者時代に、農業について書いて、興味を持ち続けてきた。

今作では身近な食の話なので専門用語が少なく、等身大のキャラクターが出てくる。

 

【新潮社HPより】

農薬散布中のラジコンヘリが小学生の集団に墜落した! 撒き散らされる薬剤、痙攣する子供、大量死するミツバチ。若手養蜂家、農薬の開発責任者、農水省の女性キャリア、それぞれの戦いが始まる。米中の食糧戦略、狙われる農地、予測不能の展開。待ち受けるのは絶望か希望か。社会派の旗手が、小説でしか描けない未来を予見する!

 

【視聴動画】

ニコニコ動画「~ジュンク堂トークセッション~ 真山仁スペシャルトークイベントNo.7 『黙示』刊行記念』2013.3.26.配信

http://www.nicovideo.jp/watch/1364283244


【養蜂】

作家になって、ミツバチの大量死を調べるために、ミツバチを飼ったことがある。ミツバチを1箱1万匹で買って、3万匹に増やす。

農薬(ネオニコチノイド)でハチが減っているのではないか、ということで、散布地と非散布地で箱を置いて比較実験した。散布地では、箱からハチがいなくなった。非散布地では、巣は残った。

 

【お茶】

農薬を結構使う。日本のお茶は甘い。しかし、新芽を虫が噛むと、甘みが消えてしまう。そこで、農薬でたくさん使う。

残留基準量は高めだが、これは、そんなに一日で飲まないから。

基準値の決め方は、一日でどれくらい飲み食いするか、を基準にしている。

ただ、一日に4リットルも飲む人は、手が震えたり、記憶障害が出たりする。

 

【日本農業の輸出先】 

東アジア中心。美味しいから買われている、というのは、2番目の理由。1番目の理由は、安全性。中国の農産物は、非常に危険。水も土も、残留農薬が多い。使っている農薬も、日本の戦前に使っていたようなものを使っている。

香港では、キャベツを輸入していて、中国産が1玉300円、日本産が1玉1000円。それでも日本産が売れる。 

 

【小説】

小説の構図や作中人物の作り方について。

ある作中人物。東京で暮らしてきた女性が地方に住み始め、「これからは無農薬だ」と言って活動するのだが、調べたり勉強したりしない。間違ってはいないが、偏っている。

 

【日本社会】

3.11.以降、SNSで「私は見た、私は知っている、私は正しい」と発信する人が増えたが、 主張の根拠が曖昧な人が多い。

飽きっぽくて、テーマが変遷する。去年は放射能、今年は農薬、来年はフリートレード。根底には不安がある。しかし、そのような人を排除してはいけない。頭ごなしに否定して、正しさと正しさで喧嘩をしてもしょうがない。この社会や文化の風景。

 図々しい人や、事なかれ主義の人が生き残るのが、日本の職場。

 

【稲作】

化学肥料や農薬は、零細な兼業農家が週に一日・二日の作業で農業ができるようなもの。稲作は、最も手間がかからない。農業を守ると言いながら、票田やJAを守っている。

農業だけでは食えないから兼業化している、というのは、農協のせい。狭い農地には無用な、高額な農業機械を入れている。

農地だと税金がかからないので、農地で遊んでるだけの「農家」が多い。

 

【野菜】

それに対して野菜は、手間暇かけて収益あげている。たとえばレタスは、夜中の2時から作業して、10個のうち1個だけ出荷している。一つには、値崩れしないように、一つには、最高の株だけを出荷するために。このような努力する農家は、土地があればもっと頑張れるのに、農地の統合が進まない。

 

農水省

農水省には、最近まで「産業」や「輸出」と名のつく部署がなかった。農水省の存在意義は、「国民が飢えないようにするため」だった。これは産業ではないので、農水省には「農業を産業として見る」視点がない。

農水省は、間に挟まっていたJAを飛ばして、「6次化」を推進している。ファンドを作って、生産から販売までやる。地方銀行が貸し先がなくて困っているので、銀行から経営アドバイスも得やすい。