jizakiの備忘録

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VideoNews「サブプライムローン危機の本質」小幡×宮台×神保(視聴メモ)

【概要】
ちと古いが、アベノミクスがバブルを生むだろうと思うので、参照しておいた。バブルは資本主義経済にとって不可避の要素。サブプライムローンが弾けて、そのほかの為替や先物などのリスクテイクバブルも連動して弾けた。バブルは不可避という前提で政策論議をするべきだろう。
 
【視聴動画】
マル激トーク・オン・ディマンド 第336回(2007年09月06日)

サブプライムローン危機の本質」

ゲスト:小幡績氏(慶應義塾大学大学院准教授)
 
小幡績
バブル研究家。自身が投資家として身をもって勉強しているので、「損切りの心理」は痛いほどわかっている。『ネット株の心理学』の著者で、神保によればこれを読んだらデイトレードがしたくなると言う。
中学生の頃、先生に対してムカついてたんだけど、どうやら制度がおかしいと気付いて、制度に興味を持ち、文部科学省に入って制度を変えてやろう、と勉強した。大学に行くと、政策の話として大蔵省の話を良く聞くようになって、政策決定の真実を知りたい、という思いで入った。確かにみんな優秀なんだけど、動物園みたいで、行動も凄く変わった人が多かった。人間的魅力にあふれてる、本物を見た、という感想。
 
【リスクテイクバブル】
リスクを「リスクじゃない」と皆が思えば、リスクじゃなくなる。リスクをリスクとして感じさせない、これが「リスクテイクバブル」の始まり。
 
【バブルの魅力】
新しく買う人が出てくる限り、倒れない。早く入った方が得。正に「ネズミ講」。
みんな、バブルだと分かってる。じゃあなんで参加するのかというと、儲かるから。バブルの絶頂期が一番華がある。
力のあるファンドは、バブル崩壊で儲ける。パニックになって、「正当な資産価値」以下で売る人が増えるから。空売りを浴びせて流れを作る。
有史以来、バブルは無くならない。
 
【ギャンブルと真実】
競馬より、株式投資の方が危険。なぜなら、競馬は2分後に結果が出て真実がはっきりするから。その意味では、デイトレードの方が決着が早い。株式バブルは、みんなの期待だから、いつまでたっても真実が判明しない。競馬のような真実が存在しない。もちろん、「ファンダメンタルズ」という考え方があって、実体経済が答えを出す、とも言われるけど、みんながそのように思わなければ実体経済を反映しない。真実は、みんなが真実と信じるもの。
 
みんなが協力すれば協力解が出るし、みんなが裏切れば裏切り解が出る。ソーシャル・バリューとはそういう性格のもの。
 
【救済】
バブル崩壊後、中央銀行は破たんした企業を救済するのを渋る。何故かというと、破たんしても救済されると分かると、ビビることなくバブルに再突入して、次のバブルがすぐ来るから。
しかし、本当に救済すべきは、バブルの最後にババを掴まされた人たち。この人達は、大抵普通のまともな人たちで、年金などの機関投資家も含まれる。
 
【熱狂の根拠】
バブルの加熱期には、中央銀行が警告を発したりしているが、みんな聞かない。興奮してハッピー状態だから。
合理的にも、「これはバブルではない」と信じる根拠がないわけではない。ITバブルの時には、「商品を抱え込まないから、今までのような景気循環とは無縁だ」などと言われた。確かに一理ある。時代時代のバブルに、それらしい理由が作られている。
初めは成長のプロセスとして始まる。しかし、いつからか「ケインズの美人投票」になっちゃう。「みんなはどう考えてるのかな」とみんなが考えてるのかな」とみんなが考え・・・と循環し、実体経済から遊離する。
 
【権威】
バブルの歴史を調べると、必ず政治が関わっている。意図的にバブルを起こしたものもあれば、意図せずお墨付きを与えちゃった、というのもある。
最近では、80年代にプラザ合意の政治圧力で金利を低下させ、土地バブルが起こった。
 
【格差】
バブルは格差を広げる。一部が儲かって、貧しい大勢が損するから。
 
サブプライムローンは、焦げ付きが分かっていた。住宅価格が上がってるから、借り換えによって焦げ付きを先送りしている。証券化によって証券のバブルが起こって、それが実物の住宅価格のバブルに還流して、自己循環的に膨らんだ。
 
大前研一の言う、「サブプライムローンミートホープが屑肉を混ぜてミンチを作ってたのと同じで、もはやどこに屑肉が入ってるか分からない、どこにでも薄く入っている」という例えはサブプライムローンしか説明していなくて、それに連動した株や先物の下落は説明できない。それに、ミンチにちょびっと混じってるくらいで狂牛病にならないのと同じで、サブプライムが証券にちょっと入ってるくらいで必要以上にビビる必要は、本当は無い。しかし、みんなの期待やビビりで形成されてきた市場だから、それが現実になる。サブプライムローンで実際に焦げ付いた額は、そんなに大きくない。
 
何故、サブプライムバブルの崩壊で、急速な円高と豪ドルの下落が起こったのか。サブプライム証券が入っていたのではなくて、「リスクテイクバブル」が弾けた合図だった。みんな何らかのリスクを取ってた。
キャリートレードは、金利の安い日本円を借りて、豪ドルを買って運用しようというもの。豪ドルが下がったら大損だけど、みんなが買うから、上がるだろう、という構造。これもリスクテイクバブル。
 
【リスクからの一斉逃避】
サブプライムローンが終わったことで、世界の投資環境が、リスクテイクバブルの時代が終わったと判断して、そのほかのリスクテイクバブルからも手を引いた。円キャリートレードの他、原油も株価も下がった。
サブプライムは明らかなバブルだとみんな認識していたし、この信用収縮がサブプライムから始まったから「サブプライム問題」と呼ばれてるけど、円キャリートレードも原油先物も、全部「リスクテイクバブル」という意味では同じ。
 
【ファイナンス】
「モダンファイナンス」=合理的ファイナンス。実物経済に基づく。ファンダメンタルズの価格を知っている裁定投資家がいて、加熱や冷え込みは調整される、という理論。株を供給する側、例えばトヨタだけ研究すれば、需要する側は右往左往しようが誤差の範囲だ、と言う考え。ブリタニカ百科事典が正しい、という立場。
「行動ファイナンス」=非合理ファイナンス。裁定投資家は存在しない。美人投票の心理。 ウィキペディアが正しい、と言う立場。格付け会社が非難されたのは、こっちの価格を格付けしていたから。しかし、みんなが真実だと思えばそれが真実になるのが市場。
 
【お祭り】
値上がりしてファンダメンタルズより高いなと感じても、個人投資家がよって来たなら、売ってバブルを潰すよりも、更に買って盛り上げてやった方が、儲かる。
均衡価格に落ち着く訳ではない。モダンファイナンスには、「べき論」が入っている。あるべきじゃないと言っても、あるものはしょうがない。言うこと自体が、パフォーマティブに自己成就する。