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VideoNews「ダイオキシン問題は終わっていない」森田×宮台×神保(視聴メモ)

【概要】

ごみ焼却場からの排出は問題無いレベルまで下がった。しかし、すでに排出されたダイオキシンが土や川や海の泥に残留している。魚介類を通して人体に蓄積する。

一番注意すべきは、胎児毒性。毒性学はこれまで、急性、成体を基準に発達。遺伝子が「正常」でも、発生初期には微量の化学物質の影響を受けやすい。 

 

【視聴動画】

マル激トーク・オン・ディマンド 第334回(2007年08月24日)

ダイオキシン問題は終わっていない」

ゲスト:森田 昌敏氏(ダイオキシン2007国際会議議長・愛媛大学農学部教授)
   
【日本】
日本はごみ処分場のNIMBY運動によって、域内処理で行うことになり、焼却場の本数が多い。世界の焼却場の半数が日本にあった時期もある。
1997年~、ごみ焼却場から出るダイオキシンによる野菜の汚染がマスコミを賑わす。1999年、対策法が立法される。以降、2005年までにごみ焼却場からの「排出量」は10分の1にまで減った。途上国では、農薬についてはほとんど使わなくなったが、焼却はまだ発生源。
ごみ焼却で、高温で焼けば分解して大丈夫。それでも発生するダイオキシンは、BUGフィルターで捕集して処分場に送られている。
 
【難分解性】 
しかし、ダイオキシンは難分解性なので、既に環境中に放出された分は残っている。ダイオキシンを分解する腐朽菌もいる。しかし培養しても、除染としては効率よくない。
 
【ソース・シンク】
ソース:ごみ焼却からの排出が減った現在、人体には9割以上が食事を通して入る。(ごみ焼却が問題になった際も、土壌や空気からの吸い込みは高くて10%程度だった。)
シンク:ダイオキシン類を含む農薬は使われなくなったが、すでに土壌に供給された分があり、土壌中のダイオキシンはなかなか動かない。最後のシンクは海の底泥だ。その一部が魚を介して人へ。
 
【生物濃縮】
<魚介>
汚染源から遠く離れたイヌイットやホッキョクグマに蓄積が報告されている。環境に広く広がっていてる、グローバルな問題。
魚介に濃縮されるが、海外産であっても、養殖魚に与える小魚から濃縮されている。
<乳製品> 
日本の乳製品は施設肥育だから、ダイオキシンない。ヨーロッパは放牧だから、ダイオキシンある。
<人体>
人間に入った場合は、最終的に焼却されて分解されるか、母乳で乳児に移る。生態系のマスとして人体は小さいので、人を焼けば済む話ではない。
 
半減期
人体に吸収された場合、半減期が長い(生体から排出されにくい)。脂肪と肝臓に多く蓄積。胆汁と一緒に腸へ排出しても、再回収されるようだ。皮膚の垢として排出される量が最も多いのではないか、という推論もある。
 
【毒性のメカニズム】
ダイオキシンPCBは「環境ホルモン(生体受容分子と結合しやすい物質)」の一種。
ダイオキシンに結びつく「Hリセプター」は、まだ働きが良く分かっていない。仮説としては、Hリセプターは「芳香族化合物を酸化分解する酵素」を生産させるシグナルを発するのだが、ダイオキシンは強く結びつきすぎて、このシグナルがいつまでも強く出すぎてしまう。これが毒性の本体ではないかと考えられている。
ダイオキシン特定疾患との間に「疫学的蓋然性」はあるが、「直接的因果関係」は科学的には未だ明らかでない。
 
ダイオキシン懐疑本】
基本的には正しいんだが、乱暴な議論。
ボツリヌス菌などの「細菌毒」の強いものや、イソギンチャクなどの「動物毒」の強いものに比べたら、たしかにダイオキシンの急性毒性は低い。ダイオキシンは、サリンなどの「人造毒」の倍程度の毒性と言われるが、何を評価基準とするかで変わる。
懐疑本のデータは古い。著者は生物学者でもない。
 
【メディアは二回しゃぶる】
人や話題が持ち上げられる時期と、落とされる時期と。それと同じ動きではないか。
日本は、メディアや行政に、その分野の訓練や専門資格を持った人間がいない。
 
【定番の本】
『奪われし未来』、『メス化する自然』の概念は今も有効。個別の事象については、その後研究が進んでいる。  
 
【毒性評価】
「急性」か「慢性」か、「致死性」か「発病性」か、「排泄」されるか「蓄積」するか。
これまでの毒性評価は、致死量を基準としてきた。
ダイオキシンで死んだ人は少ない。実験室か工場で大量に摂取した人くらい。
ダイオキシンは胎児毒性が強い。 
発がん物質対策は、70年代から対策が進んだ。成体の毒性学。
今、次世代への影響をどう防ぐか、という研究。今までの毒性学に含まれていなかった。脳の発達とか。胚・胎児の毒性学。
 
【胎児毒性】
ダイオキシンの毒性は、実験動物の種類によって、大きく異なる。これが何故なのかは、良く分かっていない。いずれにしても、その毒性は、成体ではなく胚や胎児に強く効く。胎児は、成体がもつダイオキシン回避経路を持たない、と考えられている。
だからダイオキシンの影響は、人類の「繁殖」への影響。妊婦は特に気を付ける。
 
【母乳】 
妊娠中は胎盤でブロックされる。
授乳期間は半年。1人分の授乳(半年ほど)で、母親の3分の1が出ていく。その期間に、この濃度で乳児に影響があるのかどうかわからない。
母乳の栄養的・免疫的・精神文化的メリットと、ダイオキシンの不解明なデメリットを勘案すると、与えた方がいい。
離乳食が始まると急速に体重が増えて、体重あたりの量が薄まる。
1980年代が、最も人間の濃度が高い。しかし、その頃生まれた人間への影響は評価しようがない。
 
ダイオキシンの毒性の表現型】 
典型的な症状は、皮膚に凸凹(にきび)が出来る。脂腺にダイオキシン含まれる。カネミ油症も類似の症状。ウクライナの大統領がダイオキシンを盛られた、という画像。
急性症状・・性欲の減退、神経症状。
慢性症状・・発がん率の上昇、(評価が難しい→)「免疫の過敏症」と「子宮内膜症(子宮内膜が、転移して腹腔や肺、脳でホルモンの影響で増殖する。30年前に比べて激増している)」
動物実験での胎児毒性・・精子が少なくなる、性器の女性化、行動の未発達、
 
【催奇性】 
まず、奇形の定義が難しい。奇形の統計も難しい。
ビタミンA、アルコールは自然の催奇性物質。
枯葉剤によるシャム双生児の発生の評価も、実は難しい。 
べとちゃんどくちゃんのような二重胎児は、ベトナムのその地域では、元々多かった、という報告もあり、べとちゃんどくちゃんがダイオキシンの直接的な影響ではない、という議論も。
 
予防原則】 
ウルリッヒ・ベック「リスク社会論」
計算不可能なリスク・・・ダイオキシン原発、温暖化、GM。保険のリスク計算になじまない。
危険性の証明か、安全性の証明か・・・蓋然性でのアクション、予防原則、警戒水準を超えたらブレーキをかけた方がいい。
 
【環境経済】
ヨーロッパは効用や生産より環境と安全で世界をリード、ドイツの化学を巻き込んだ「リーチ」システム。
それまでは、米NIHの試験に世界中がただ乗りしていた。米政府が負担できなくなってきたので、ヨーロッパは企業に、という発想。
環境基準は、最終的に、一番厳しいスタンダードを立てた基準に収束する。
農業戦争は、微量分析化学の分野で起こった。それを非関税障壁として使った。微量のPCBが含まれて、輸入禁止になった品目の歴史。
 
【玩具の重金属】 
子どもが4歳までにしゃぶる・かじる玩具のプラスチックの可塑剤で、鉛がよく含まれる。
鉛の毒性は、動物実験では、知能遅滞、多動症
 プレステがヨーロッパ輸入されなかったのは、カドミウムが含まれていたから。玩具に分類されたから。PCならOKなのに。
 
おしまい