jizakiの備忘録

動画や本などのメモ、etc

VideoNews「3・11から1年+3週間」萱野×津田×神保×宮台

【概要】

3.11から1年後を機に、主に日本社会の民度と政策決定過程について議論している。 

 

【見た動画】

http://www.videonews.com/charged/on-demand/571580/002356.php

(2012年03月31日)マル激トーク・オン・ディマンド 第572回 ゲスト:津田大介、萱野稔人 をみて、メモ。

 

【震災発生から1年】 

津田:3.11から1年後、TVの特集では津波ばかりで、原発についてはほとんどない。単に忘れるための儀式と化している。

 

萱野:原発事故を契機として、専門家への信頼は低下したが、以前からの潮流。つまり裁判員制度や、70年代の全共闘運動など。しかし凶悪犯罪の司法判断と違って、原子力政策については、市民はバイアスのかからない情報を取捨選択できないのでは。

 

民度と政策決定過程】 

宮台:政府が情報(SPEEDI)を出さなかったのは、国民のパニックを恐れたのではなく、原発安全神話で騙されていた、という怒りが爆発するのを恐れたから。 

市民の側に、政治や報道を監視する態度が育っていない。専門知が重要なのは当然で、専門家が専門家として重視されていないのが問題。各種会議でも官僚的書類の資源として利用されている。科学者としても、予算があるから乗らざるを得ない。

科学の民主化のために、科学者は「if…then文、条件プログラムの集積、アーカイブ」を提供するのが務めで、その社会的判断は市民が行うのが筋。

  

萱野:市民は、面倒くさい話に関わりたくない、と思うでしょう。

 

神保:現存の原子力の専門家はほとんど推進側なので、原子力規制帳も7割が保安院からの出向になっている。一方、警鐘を鳴らしていた少数の専門家や市民団体(原子力資料情報室、など)は、今まで何十年とカルト扱いされて冷や飯を食わされてきたのに、今になってマスコミによって神のような扱われ方をしている。

 

宮台:専門知の所有者(御用学者や省庁、電力会社)は権益の誘導をするし、イデオロギーの所有者(反原発の市民団体)は価値観の布教をするので、共通のプラットフォームに乗って情報共有と政策決定しましょう、という風にならない。

 

jizaki:市民の民度が高まらないのは、みんなそれぞれの仕事(金稼ぎ)で忙しいから。民度が高いのは、独立心の高いジャーナリストや社会学者くらいで、これは仕事になってるから。民度を挙げようとしたら、GDPを下げる覚悟で。私自身、仕事を休んで時間が出来たからこそ、このVideoNewsなどの報道を見る時間と精神的ゆとりが出来た。

 

萱野:専門家の中でも、原子力政策についての意見は割れている。低線量内部被ばくについては、そもそもデータがない(専門知の不在)。また、不利益の再分配を決定する政策を、市民が決めることは非常に難しい(NIMBY…政治学も経済学も解決策を持たないアポリア)。

 

宮台:文部官僚の寺脇研と協力して、ゆとり教育を進めてきて、校長権限が強化されて、制度的には現場でいろいろやれるようになったが、実践しているのは民間から来た藤原校長の和田中学くらい。制度の理念を理解していないと、だめ。制度は糸みたいなもので、人を引っ張れる(規制)けど、押せない(欲望)。

 

萱野:知的忍耐が必要。希望がなくても、物事は考えられる。

 

除染】 

津田:環境省が電通を通じて、TVや新聞に除染の広告費に30億円を出しており、除染に効果がない、ということを、官庁もマスコミも出しにくくなっている。

 

津田:原子力資料情報室がやった一番の仕事は、TOSHIBA原発設計者、後藤まさしを3.12の時点で呼んだこと。分かりやすく、当たっていた。東大の先生に取材すると、除染は、近辺の森で順繰りに樹木の皮を 剥いで処理し、材はチップにして利用するのがよい。

 

【日本全体の縦割り化】

萱野:官だけでなく、マスコミや学、民も相当に縦割りされていて、新興国と過当競争にならない「新しい欲望」、「新しい市場(損得勘定)」を開拓しよう、という産業構造改革が進まない。農業・漁業などの1次産業の6次産業化とは、生産・加工・流通・販売をセットで考えて収益を分配すること、今の漁業は、イオンなどによって不当に安い値段で買い叩かれている。

 

宮台:スローフードの仕組みは、費用を外部化(買い叩き)しにくいので、winwinになる。

 

【財政破綻】 

萱野:被災地で、仮設住宅に避難している人のために、高台に公営住宅が建てられている。 住人は多くが高齢者で、10年後、20年後には住む人がいなくなって、財政破たんする。夕張と同じ。

 

【ドイツの脱原発】 

宮台:ドイツは先進国の中では日本に並んで男女の性別役割分業がある国で、緑の党脱原発進めているのは、チェルノブイリ事故の後、何か行動しなければと思った専業主婦が意見を集約してきたから。男性の興味はどうしても仕事に集中して、既得権益から動きにくい。