jizakiの備忘録

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VideoNews「われわれの「食」はどこに向かうのか」宮台×神保(視聴メモ)

【概要】

食に関わるドキュメンタリー映画を紹介。

『世界が食べられなくなる日』 、『FOOD,INC.』、

『ありあまるごちそう』、『よみがえりのレシピ』

 

【視聴動画】

VideoNews「われわれの「食」はどこに向かうのか 」宮台×神保

第624回 マル激トーク・オン・ディマンド (2013年03月30日配信)

 http://www.videonews.com/charged/on-demand/621630/002715.php

 

【関心の格差】

 TPPを契機に「食の安全への関心」が高まるかと思われたが、原発問題と同様、食の安全に関する関心を持つ層も、日本社会の中で二極分解した。ある程度経済的に裕福で時間の余裕のある人たちは、「原発の内部被爆の問題」や「食の安全の問題」に関心を持っている。

しかし、経済的に貧窮していて共働きで時間のない人達は、それどころじゃない。「それどころじゃない問題」。

放射能や食の安全の問題への関心にしても、「金持ちのファッション」に堕していないか。「余裕のある人たち」は、金さえ出せば安全な食べ物を手に入れられる。結局被害が集中するのは、経済的にも時間的にも余裕のない貧困層。

食品が有り余っているスーパーの棚の裏にある事情を知ると、違って見える。しかし、不味くてどうやって作られてるか分からない食材でも、安ければ買ってしまうし、粗悪食材をうまく調理する手技(堅いステーキ肉を叩いて玉ねぎに漬けるとか)も使ってしまう。 

 

【映画『世界が食べられなくなる日』】

フランス。 2013.6.8.~渋谷のUP LINK他でで公開。問題を冷静に考えるにはいい映画。

「遺伝子組み換えGM」を縦糸に、福島やアフリカの農業が挿入される。 

GM(genetic modified)と原発に共通するのは、「不透明性と嘘」によって反民主的に押し付けられたこと。科学技術によって「制御不能」であること。一度汚染されると「不可逆的」で消えないこと。世界中に存在すること。「健康被害」をもたらすこと。

宮台:電力会社や種苗会社などを「悪者」にする勧善懲悪のストーリーに酔うのではなく、原発やGMと共に歩んできた「市民社会の脆弱さ」を考えなくてはいけない。

環境論者のよく言う、コロリ毒(3カ月の急性中毒)とジワリ毒(内部被爆、GM)。

 

【科学技術】 

ウルリッヒ・ベック「リスク社会論」は、19世紀のリスクとは異なる20世紀のリスクについて考察した。巨大な科学技術が産業に組み込まれ、一般市民がその成果を「使っている」し、リスクに「浸かっている」。

科学技術の進展を支えるのは、原子や細胞の「核」を制御できるという、人間の自尊心(自然感情)の反映でもある。「核」の科学技術によって「新しい世界」が開け、果実を得られるかもしれない。イニシャルコスト、イニシャルリスクから逃げてはいけない。という近代=科学の企投。

技術が未熟な段階でも、金儲けに利用できると考えた商人が投資・起業してきた。大規模な商業に繋がってくるからこそ国家予算もつき、より多くの科学者が研究できる。

jizaki:「熱」の科学技術によって「エンジン」が、「電磁気」の科学技術によって「電気機器」が生まれたように。

 

【社会設計】

宮台:コモンズ(公共性)に関する利害の浅ましさ、さもしさの問題。その心理を相手に投影して、先に裏切る。自分たちがやらなければ、敵=ライバルがやってしまう。結果として、我先にコモンズを破壊してしまう。

「顔の見える関係」の中で売り買いすれば、「善きこと」をしようという動機が働きやすい。「巨大で不透明で抽象的なもの」に依存すると、「後は野となれ山となれ」という浅ましさ(無責任)を呼び起こす。

jizaki:顔の見える人口集団では、規模の効果が消失して、様々な果実は得られなくなる。私はその方向でいいと思っているが、世の中の皆はそっちに進めるのか。保険原理が成立するのは1万人だっけか? それに、地域格差はどうするかな。

 

【マス・メディア】 

人は「不愉快で不都合な真実」は意識したくないし、忘れたい。普段からその果実を使っているから、目をつぶれば短期的には得をする。

認知的バランス理論:9.11.後のアメリカ人がメディアにアクセスした様子にも表れている通り、人は不愉快な事実を見たくない。人びとは、真実や隠された構造を知るためにメディアにアクセスするのではなく、自分の「承認感情」や「居場所感覚」を得るためにアクセスする。

かつてマスメヂアは、国民的=家族的メディアだった。TVはお茶の間で親と子が一緒に見ている。だから、60年代の怪獣物は「子供は大人に解説してもらって分かる」作りになっていて、深かった。社会的なニュースは、床屋政談や井戸端会議で咀嚼された。

TVが個室に分散し「個人視聴」の深化した80年代以降、メディアが個人を直撃するようになり、集団的に咀嚼する緩衝帯が無くなった。

バカロレア(フランスの大学入試問題)で、「人は真実を知る義務があるのか」という問題が出た。メディアの受容環境が個別化した状況では、人はますます不都合な真実は知りたがらないし、真実を知ることに耐えられない。

ボードリヤールの言う、”メディアは「真実」を覆い隠した「疑似現実」を作り出すのではなく、記号の乱舞(多元的現実)を作り出すのだ”という状況は、井戸端会議の消失で深化した。

 

【映画『FOOD,INC.』】

2008年アメリカ。2011年日本公開。DVDにもなってる。「INC.=incooperated」で、中小企業によく使われる用語。『モンスターズ・インク』とか。

商業映画のプロデューサーとしても成功した人が監督している。テンポ、音の使い方が上手くて、娯楽映画としてよく出来ている(殆どホラー映画の完成度)

「人の感情や情緒を強く刺激する映画」なので、強靭な精神を持たないと思考することが出来ない。ホラー映画と受け取られかねない。「見たくなかった」と思う超お奨め映画。

食肉(牛、豚、鶏)の生産は特にショッキング。鶏は狭いケージで支えて糞尿の中で育てるので、支えを取ると数歩あるいて前のめりになり、足の骨が折れる。 

監督:「食品会社は、この仕組みでないと食が足りなくなる」と言うが、本当か?と考えて作った。

映画の最後では、「消費者の選好行動ががウォルマートをも動かす」という方向性も示しているが、映画の全体的な印象が強すぎて、「感情的反応」で終わる人も多いだろう。 

「ナゲット」の製造過程なんかは、ネットに上がってるので見ると面白い。

 

【経済学】

経済学は「いい加減な与件(社会的条件の軽視)」から初めて、精緻な数学的理論を組み上げて、馬鹿げた結論を出す。だからパレートは、社会学と経済学を融合させようとした。パーソンズはその後継者。 

宮台:資本主義はやめられない。サイモンが、資源の最適分配に関して情報の観点から資本主義が最適だと数学的に証明した。ただし、経済の与件を変えることはできる。

 

【NAFTA】

北米自由貿易協定の帰結。メキシコのGDPは2倍になったが、社会の格差は拡大した。トウモロコシ農家はほぼ全て失業した。

モンサントのGMトウモロコシの花粉が飛んできて交配し、特許権侵害で訴えられた農民がいる。GMを開放系に出すと、こうなる。開放系に出す際の論争で、法的に勝負が決まっている。その論争で、農民が代々採種してきた種には、知財権を主張できないことになっている。しかし、これはおかしいだろ。

 

【映画『ありあまるごちそう』】

ヨーロッパの食のロードムービー

宮台:映画としてのインパクトが薄くて、考察を迫る力も弱い。

神保:しかし、ヨーロッパの伝統的な漁業と工業的な漁業の話には、見るべきものがある。

 

【映画『よみがえりのレシピ』】

日本、山形。2011山形ドフィル出品。1981年生まれの渡辺監督。

固定種を大事にする農家と、それを使った地元のイタリアンレストランの話。

 

【本『食の終焉』】

最近翻訳が出た。著者ポール・ロバーツのインタビュー。持続不可能な農業・食品加工業の指摘。

 

おしまい